ブランド力、安さ、ファッション性では勝てない

メガネスーパーの一番の強みは何だろう――。これは、私が社長になってから、常に考えてきたことであり、社員に対しても常に問いかけてきたことだった。何を武器に戦っていくのか。現場でさまざまなものを見ながら、突き詰めて考えていった。最終的に辿り着いたのは「私たちの強みは、たしかな技術力である」ということだった。

ブランド力で戦う、安さで戦う、ファッション性で戦うなど、スタイルはいろいろある。しかし、どれも競合他社には及ばないと私は判断した。そこは素直に認めるしかない。一方で、検査技術、加工技術といったテクニカルな側面では、絶対に他社には負けないものを持っていた。そこにフォーカスするべきではないか。それが、アイケアカンパニー宣言の出発点だった。

メガネスーパーは、過去にメガネに関する学校を運営していたことがある。伝統的に技術力の高いメガネチェーンだ。1974年の創業以来、1000万人を超えるお客さまとお付き合いするなかで培われた、経験や知識だってある。

世間的には、安価なフレーム代だけで「レンズ0円」というのがメガネチェーンの主流になっていて、店舗での検眼は一般的に短時間だ。われわれもその流れに乗ってしまい、苦戦を強いられていたわけだが、「もう、その潮流からは降りよう」と決めた。

時間をしっかりと使って精度の高い検査を行う。そのうえで、お客さまに最適なレンズをご提案する。高い技術力と経験の蓄積に支えられたメガネのコンシェルジュとして、アイケアのプロフェッショナルとして高付加価値のサービスと商品を提供していき、競合と徹底的に差別化していこう。そんな方向に、大きく舵を切ったのが、2014年6月のことだった。

社長の決断に、社員が猛反発

具体的には、まず「レンズ0円」をやめた。検査も有料に変えた。他店が「無料で、20分で終わります」と言っているところ、1時間くらいかけてじっくりと行う。そのかわり、検査料をちょうだいする。

予想通りだが、社内には相当な反発があった。それはそうだろう。昨日まで「無料で検査します」「フレームを購入していただければ、レンズは無料で付いてきます」とお客さまにセールスしていたのだから。「社長、そんな施策では、競合に負けてしまいます」と訴えてきた社員も多かった。

 私は頑として折れなかった。以前はメガネ1本をつくって3万円以上をいただいていたところ、「検査無料」「レンズ0円」にシフトして、客単価は2万円を切っていた。結果、大赤字になった。「0円で戦って、負けてきた結果が今の状況じゃないか。利益がまったく出ず、火の車になった。そこから脱却するには、劇薬を飲むしかないんだ」と説き伏せた。

お客さまの心に響くサービスとは何か

アイケアカンパニー宣言をしてからは、安さではなく、プレミアム感で勝負した。精度の高い検眼をし、質のよいレンズを提案する。実際、よいメガネをかけると格段に見やすくなり、目が疲れにくくなる。現在のメガネスーパーは他店に比べると価格が高い。しかし、満足感、納得感がまるで違う。

高価といってもメガネ一式で3万6000円程度だ。3年に1本、メガネを新調したとしても、月換算で1000円、1日換算で33円ほどだ。よいメガネをかけて、快適に過ごせるなら、1日33円の出費はなら高額とは言えないのではないか。価格よりも価値をお客さまに伝えてほしい、とスタッフに指示している。

お客さまには、お客さまの財布事情がある。それは十分に承知している。だから、

「今回はフレームを少しお求めやすいものにしてはいかがでしょうか」

「用途に合わせて2~3本のメガネを持つのが理想ですが、1本だけ持つなら、このメガネが適切かと思います」

という具合に、お客さまに合わせたご提案していけばいい。きっと、心に響くはずだ。心のこもった提案ができるメガネスーパーであってほしい。