週9回、社員と酒を飲んでいる

私が現場に強いこだわりを持っているのは、歴史好きだから、ということと関係している。私がイメージする理想の企業経営は、自ら前線に出て軍勢を巧みに操る戦国武将だ。すべての戦況を把握し、配下の戦士たちを信頼して、即座に指令を送る。

どんな局面にも対応し、勝ち残っていく。そんな理想を実現するには、組織と自分の感覚を合わせておく必要がある。まるで自分の指先、足先の感覚であるかのように、組織の状況を掌握しておきたい。現場に出るのは、そうした感覚を常に研ぎ澄ませておきたいからだ。

したがって私は、いつも社員に会っていないと不安で仕方がない。会って、いろいろな話を聞きたい。だから、週7日のうち、9回くらいは社員と飲む。酒席のダブルヘッダーは当たり前。私のやり方を泥臭いと思う向きもあるだろう。しかし、上品にやっているだけでは、“風前の灯火”状態にある企業を再生することなんてできない。

私の仕事は、メガネスーパーを黒字化し、さらに成長、発展させることだ。そのためには、泥臭かろうと何だろうと、必死にやる。

現場主義を貫いて、見えてきたビジョン

私が現場に身を置き、現場の空気に触れ、現場のスタッフたちとフラットに付き合うことで、社員たちも変わってきた。職場は熱気を帯び、それぞれのミッションに専心するムードが醸成されていった。そのムードは組織に“勢い”をつけた。

組織の勢いは、私が社長になって数カ月程度に結果として表れた。私が経営に参画するようになった2013年6月以降、10月までは既存店舗の売り上げ前年比が85%、90%と低迷していたのだが、11月には久々に100%を超えた。年間での赤字脱出は2016年4月期になったが、そこに至るまでの間も、社員の活性化が進み、組織に勢いが出てきた、という手応えは感じていた。

社長就任以来、一貫して現場にこだわりながら、地道な取り組みを続けてきた。その中でようやく到達したビジョンが「アイケアカンパニー宣言」だった。