君たちは、10万人に1人の経験をしている

当社には、まだまだ課題が多い。変えなければならないこともたくさんある。ただ、上場廃止寸前の状況から這い上がり、黒字転換したことは、やはり大きな成功体験であり、社員にとっても自信になっていると感じる。社員に、よく言う。

「こんな企業再生、私は見たことがない。君たちはビジネスマンとして1万人に1人くらいしか経験できないようなミッションを成し遂げてきたんだ」

「このまま成長して、業界トップに辿り着ければ、10万人に1人のビジネスマンになっているはずだぞ」

当社が目指すのは、小売業界ナンバーワンの給料だ。社員にはそう宣言している。「え、メガネ業界トップじゃないんですか?」と社員からツッコまれるが、「私が見すえているのはそんな地平じゃない。小売業界ナンバーワンの売り上げだから!」と返している。

当社の売上高は、小売業界全体では下から数えたほうがはやいが、私は戯れ言を口にしているつもりはない。必ずや、メガネスーパーをトップクラスに持っていくつもりだ。2016年12月に、9年ぶりにボーナスを支給した。今、業績は堅調に伸びている。今期の売り上げも、極めて順調に推移しており、次の決算がとても楽しみだ。

私の考える最高の学校をつくりたい

未来の話をした流れで付言すると、学校をつくりたいと思っている。2016年10月、メガネやコンタクトレンズ、補聴器の販売スペシャリストを養成するカンパニースクール「MSアイケアスクール」を設立したのだが、これとは別に、一般的な学校を手がけてみたい。

これは会社としてというより、私個人としてのミッションだ。できれば、中学、高校、大学まで設けて、学校法人として正式に認可を受けたい。あまり公言したことはないのだが、夢物語ではなく、かなり現実的に検討している。

もともと教育には強い関心があった。将来を担う子供たちに、私の考える最高の教育を提供したい。私財のすべてを投じてでも実現したいことだが、学校の設立には1000億円でも足りないかもしれない。そもそも、今の私に蓄えなどほとんどないから、これからも愚直に、誠実に自分の仕事を続けていくほかない。

(構成=漆原直行 撮影=黒坂明美)