複数年で分割払いする「後年度負担」という仕組み
朝日社説は「限りある予算のなかで防衛費が膨張すれば、それだけ財政全体が圧迫される」とも指摘する。その通りである。小学生でも理解できるだろう。
それなのに安倍政権は北朝鮮の脅威をいいことに防衛費を拡大し続けてきた。今後も増加させていく気なのだろう。
朝日社説は「ミサイル防衛をどこまで優先するか。巨額の費用に見合う効果があるのか。次々と兵器を購入する背景に、米国への過度な配慮があるのではないか」と批判した後、最後にこう訴える。
「論点は多い。年明けの通常国会で徹底的な議論が不可欠だ」
これも同感である。民主主義の原点は国会での論議にあるからだ。朝日社説は米国からの武器購入の問題点をこう説明していた。
「米国製兵器の多くは、日米両政府が直接取引する有償軍事援助(FMS)で導入される」
「米側が見積もった金額を前払いした後に納入が始まり、納入が完了した後、精算して価格を確定させる。このため、後になって価格が上がることもある」
「高額の兵器は複数年で分割払いする『後年度負担』という仕組みで購入するため、将来の予算の制約要因にもなる」
このFMSや後年度負担を日本にとって有利なように変えていくことはできないのか。これも国会審議の中で検討してほしい。
読売は「防衛費の増額は適切だ」
12月23日付の社説で防衛予算を扱ったのは朝日新聞だけだったが、2日遅れて読売新聞が25日付の社説で取り上げてきた。しかも朝日社説と同じ第1社説だ。しかしその内容は朝日社説と反対に防衛予算の増額を認めて評価している。
読売社説はその冒頭から「北朝鮮や中国の軍備増強に対し、日本も相応の防衛力を整備し、抑止力を高める必要がある」と書く。
続けて「政府の2018年度予算案で、防衛費は前年度当初比1.3%増の5兆1911億円と、過去最高を更新した。日本の安全を守り抜くため、6年連続の増額は適切である」と評価する。防衛費の拡大を批判する朝日社説を意識した書きぶりである。
さらに「18年末には、新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画を策定する。新たな脅威に的確に対処するため離島やサイバー空間の防御、テロ対策を含め、防衛態勢を多角的に強化することが欠かせない」とも主張する。
兵器購入で日本は有利に立てるのか
防衛費の拡大問題で対立する朝日社説と読売社説ではあるが、読売社説もFMSの問題を取り上げる。米国との交渉の中で日本に利するように解決していく術を見つけるよう主張を展開している。
「近年、『対外有償軍事援助(FMS)』に基づく米国からの防衛装備の購入が急増している。18年度は4000億円を超す」
「米国が価格や納期の設定に主導権を持つ制度のため、その言い値で購入を迫られがちだ」
「他の装備の調達・維持費、自衛隊の訓練経費などへのしわ寄せが深刻化している」
「小野寺防衛相が『精査し、コスト縮減に努力する』と語ったのは当然だ。法外な価格上昇を招かないよう、米政府と粘り強く交渉することを忘れてはならない」
こうした読売社説の主張は朝日社説のそれと通じるものがある。沙鴎一歩も賛成だ。繰り返すが、外交努力で日本政府に有利な道を探ってほしい。