今の子ども達はタダ・ネイティブ世代
では、物欲が低下し、最新の情報も求めない、SNSと同い年の今の子ども達は結局、どんな世代ということができるのでしょうか。
鍵になるのは、コスト感覚です。例えば、ネット接続にせよ通話にせよ、以前は量や時間が増えるとそれだけ通信コストがかかっていましたが、光回線とWi-Fi、通話アプリなどの普及によって、親が光回線の通信料を払っている限り、家庭内でそれを利用している子ども達にとっては、使い放題、話し放題の状況が生まれています。
コンテンツについても、以前は何を利用するにせよ有料だったものが、スマートデバイスさえあればほとんどが入り口は無料。YouTubeには膨大な無料のコンテンツが格納されています。実際に、彼らはゲームも、音楽も、マンガも全て無料のアプリで楽しんでいますし、以前はゲームセンターに行って撮っていたプリクラも、手元の画像加工アプリが代替しています。
費用や手間、労力をかけずとも、情報もコンテンツも自由に利用できるというのが物心ついた時からの当たり前。いわば無料が当然という「タダ・ネイティブ世代」なのです。だからこそ、物欲や情報ニーズについても、根本的な地殻変動が起こっているのです。
ただし、タダ・ネイティブ世代は、全くお金を使わない、無料だけを志向する世代というわけではありません。私達の実施した家庭訪問調査では、タダ・ネイティブ世代の子ども達は、タダが前提だからこそ、これまでにないお金の使い方を見いだし始めていることも見えてきたのです。
次回からは家庭訪問調査での発見を中心に、タダ・ネイティブ世代が生み出す、次の時代のスタンダードとなりうる価値観に迫っていきたいと思います。
博報堂 生活総合研究所 上席研究員。2005年博報堂入社。マーケティングプラナーとして、教育、通信、外食、自動車、エンターテインメントなど諸分野でのブランディング、商品開発、コミュニケーションプラニングに従事。2012年より博報堂生活総合研究所に所属し、日本およびアジア圏における生活者のライフスタイル、価値観変化の研究に従事。専門分野はバイタルデータや遺伝情報など生体情報の可視化が生活者に与える変化の研究。著書に『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)がある。