「ゆとり」を目指してはじめる
この「とりあえずの薬物療法」は、効果がなければいつでも変更できる、そう深刻に考えなくていい、心理的に患者さんを追い詰めることが少ない、などの利点があります。また患者さんがこの説明を理解し気軽に薬になじむことができれば、お薬が少量で済む印象があります。
私の経験からも、薬でゆっくり休んだ脳は、自身の問題点やその解決法を再発見する力を(時には目覚ましいほどに早く)回復させるようです。言い換えれば、薬は患者さんの自然治癒力を目覚めさせる・回復させる・発揮させるための道具として使用するとも言えるでしょう。
このような「ゆとり」を目指してはじめる「とりあえずの薬物療法」は、十分に意味のある治療だと自負しています。
次回は「薬のやめ時」についてお話します。
(本連載は隔週金曜日に掲載、次回は12月22日の予定です)
国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 精神医学教授。1952年佐賀県生まれ。九大法学部を卒業後、精神科医を志し久留米大学医学部を首席で卒業。九州大学病院神経科精神科で研修後、佐賀医科大学精神科助手・講師・その後佐賀県立病院好生館精神科部長を務め、2012年4月より現職。この間佐賀大学医学部臨床教授を併任。