スマホ決済でようやく「信用」が担保可能に

中国式のシェアエコは、QRコード読み取り機能を用いたスマホ決済という日本人にはあまりなじみがない支払いシステムを伴う。決済時の見た目が近未来感を覚えさせるのだろうか。現地事情をそれほど深く知らない日本のビジネスパーソンたちは、強いインパクトを受けるようだ。事実、今年に入って中国式のシェアエコを紹介する記事では、「中国はすでに日本を越えた」「ハイテクだ」といった主張が目立つ。

※スマホ決済の「アリペイ」と「ウィーチャット・ペイ」にそれぞれ対応、Wi-Fi提供中……という3本柱の完備が、近年の中国都市部の飲食店の基本だ。大連市内で筆者撮影。

だが実際のところ、中国においてシェアエコとして喧伝されるサービスの内実は、もともと先進国には当然のように存在するものが多い。つまり近年になり「シェアエコ」の形で登場したコインランドリーやカプセルホテルは、これまで中国では利用者のマナーへの不信感などから大規模に展開できなかった業種である。

個人情報と紐付いたスマホ決済の普及や、とりっぱぐれがないデポジット制度が登場したことで、中国でもようやく利用者の「信用」が求められるサービスを展開できるようになった、という話なのだ。

もちろん中国式シェアエコには、爆発的に普及しつつあるシェアサイクルのように(問題も多々あるものの)非常にイノベーティブなビジネスモデルを持つものもある。だが、現地事情に詳しくない外国人は、「トホホ」な実態しかないサービスでも、派手な宣伝にだまされて、妙に過大な期待を抱いてしまう。どちらも中国ではよくあることだ。

今年10月24日に閉幕した中国共産党第19回大会では、「イノベーション(創新)」や「シェアリング(共享)」を今後の「発展思想」に含める方針が打ち出され、国家としてこれらをいっそう推進していく姿勢が改めて示された。今後の中国のシェアエコ業界がどう変わり、その等身大の姿はいかなるものであるのか。より冷静な目で眺めていきたいところである。

安田 峰俊(やすだ・みねとし)
ルポライター、多摩大学経営情報学部非常勤講師。1982年滋賀県生まれ。立命館大学文学部卒業後、広島大学大学院文学研究科修了。在学中、中国広東省の深セン大学に交換留学。一般企業勤務を経た後、著述業に。アジア、特に中華圏の社会・政治・文化事情について、雑誌記事や書籍の執筆を行っている。鴻海の創業者・郭台銘(テリー・ゴウ)の評伝『野心 郭台銘伝』(プレジデント社)が好評発売中。
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