中国式シェアエコは「B2C」ばかり
いっぽう中国の場合、シェアエコを名乗って物品を提供する母体の多くは「企業」だ。例えばシェアサイクルやシェア充電器は誰かが持つ遊休資産を貸すわけではなく、最初から運営元企業が顧客への貸し出しビジネスのみを目的として投資・開発したものである。
もちろん、中国版Uberである「滴滴出行」や家を民泊として貸す「途家」のような、米国式のシェアエコに近いサービスも存在するが、全体としては企業主導型B2Cのほうが多い。
ゆえに、本来シェアエコの理念として存在したはずの、資源の節約や対等な個人同士の資源の交換・共有といった思想は、中国ではかなり希薄である。なかには単なる「スマホで決済できるだけの旧来型ビジネス」にしか見えないものが「シェア○○」を名乗っている例も少なくない。
中国メディアも「偽シェアエコ」を批判
ゆえに今年夏ごろから、中国メディアでも、現在のサービスのありかたを「偽物シェアリングエコノミー」と呼び、その商業主義の強さや羊頭狗肉ぶりを批判する論説が現れるようになった。なかでも代表的なのは、今年8月24日に『新週刊』誌上に発表された「出て行け! 偽シェアエコどもめ」という過激なタイトルの一文だ。著者の蘇静氏は冒頭からこう指摘している。
“ちかごろ、ベンチャー分野ではヘンな言葉づかいが流行している。どこにでもあるものに「シェア○○」とくっつけることで、ネット時代に流行するニューエコノミーモデルの一環であるかのように偽装することができるようになったのだ。”
蘇氏が文中で指摘する、中国の「偽シェアエコ」の事例は以下のようなものだ。
“たとえば合肥市に「書店があなたの書斎に!」とうたう「世界初のシェア書店」というものができた。アプリでデポジットを貯めてから書籍を借りられるシステムを提供しているというわけだが、これは図書館となにが違うのだろうか?”
“福州市で展開している「シェア冷蔵庫」は、まずアプリをダウンロードしてQRコードを使ってお金を払い、シェア冷蔵庫内に置かれた飲み物やフルーツを買えるというシステムである。言うまでもなく、これはシェアでも何でもない、ただの「自動販売機」にすぎないのではないか”