無意味な「ローカルルール」の統一に大きな期待
混合介護の柔軟化によって従業員の業務効率向上や収入増、従業員の処遇改善などが見込まれるが、実の所、サービスを提供する事業者が最も期待を寄せているのが「ローカルルール」の統一だ。
介護分野においては、法令や通知の解釈に相違が生じることで、自治体ごとに実施できること、できないことの相違が生じているケースが少なくない。A市では実施して問題ないとされたことが、B市では実施できないとされることが実際に起こっているのである。
複数自治体で同じオペレーションが実施できないため、地域別に組織内のルールや仕組みを構築する必要があり、市をまたいで広範囲に展開しているような事業者にとって、このローカルルール問題は影響が大きくなる。そのため、特に大手事業者は、混合介護の議論が進む過程としてローカルルールの存在が明らかになり、統一されていくことに期待を寄せている。
弾力化に向けて解消しておくべき課題
混合介護の弾力化については当然、メリットだけではなく課題や懸念点も挙げられている。例えば、事業者が収益性の高い保険外サービスに注力し保険サービスの質の低下や人手不足が拡大する懸念、低所得者と富裕層で不公平が拡大する懸念である。
混合介護における保険外サービスは同時一体的提供が前提にあり、介護保険サービスを提供する事業者が提供することが想定されている面が大きい。実際に保険外サービスを提供したいと考えている介護事業者は多いが、保険外サービスを提供している事業者は限定的となっている。この理由は保険サービスに係る人手が不足しており、保険外サービスに回せるリソースがないということが大きい。現状、介護事業者は保険サービスの人手を回して保険外サービスを提供しようという考えは少ない。
また、すでに保険外サービスを提供している事業者も少なくないが、その多くにおいて、保険サービス利用者のうち保険外サービスの利用は2割にも満たず、利用額も月に数万円あれば多い方であり、大半は数千円程度という状況である。介護事業者は、保険外サービスに注力することで十分な収益を得るには程遠い状況であることからも、保険サービスからのシフトが生じる可能性は低いだろう。
現状で提供されている保険外サービスの内容を見ると、その利用額は1回あたり15分程度の場合で500円~1000円程度、1時間であれば2500円~4000円程度が多くなっていて、必ずしも高額ではない。また、いわゆる富裕層はここで示しているような保険外サービスではなく、一般的なサービスとして掃除や配食といった専門サービスをすでに利用しているケースが多い。
想定される費用が必ずしも高額ではないことやすでに富裕層は自費でサービスを利用している現状を踏まえると、混合介護弾力化によって大きく不公平が拡大するということは少ないのではないだろうか。
混合介護が解禁されれば、介護以外の事業者の参入が予想される。注意が必要なのは訪問介護よりもデイサービスだ。デイサービスの利用者に物販やサービス提供などができるようになれば、「ビジネスチャンス」が広がる。悪質な業者を排除できるように、利用者保護の取り組みが重要だ。ケアマネジャーや事業者が利用者や家族の状況を踏まえて利用の可否や利用できる金額の上限をあらかじめ定める、サービス提供・物販をできる事業者をあらかじめスクリーニングするなどの対応が求められる。