トヨタ、日産、ホンダの覇権争いのゆくえ

トヨタが大きく先行するハイブリット車での競争を回避し、EV開発へ経営資源を集中するという日産の戦略は、ある意味では大きなカケだったが、トップランナーが重点を置かない分野を攻めるというのは、理にかなった戦術ともいえるだろう。今日、EVへの追い風がここまで吹くとの確信があったわけではないだろうが、EV「ゾエ」のルノーを含め、日産グループがEV陣営の拡大に注力したのは事実である。

16年10月、日産は2373億円を投じて、三菱自動車の株式34%を取得した。三菱自動車はインドネシアやフィリピンなどで三菱商事、双日といった総合商社とタッグを組んでおり、その販路の活用も視野に入れたことだろう。三菱商事は一時期、三菱自動車に1400億円を出資、現在もおよそ9%の株式を所有している。もちろん、EVの仲間を増やす目的も大きかったはず。三菱自動車のEV「アイ・ミーブ」の発売は、日産に先行する09年である。

『図解!業界地図2018年版』(ビジネスリサーチ・ジャパン著 プレジデント社刊)

日産・ルノー・三菱自動車の3社連合は、戦略的協力関係を結んでいるドイツのダイムラーや中国の東風汽車などとも、EVや自動運転車を推進する。一方で、日産はNECと合弁でスタートさせたEVの心臓部ともいえるリチウムイオン電池の生産からは撤退し、調達に切り替える。新たな段階に進む、ということだろうか。

ホンダの場合は、トヨタと同じようにハイブリッド車や燃料電池車で先行しているだけに、当面はEVを含めてエコカーを推進するという全方位作戦でいくようだ。

ただし、ホンダはこれまで業界再編や提携とは距離を置いていたが、米GMとは燃料電池システム開発で合弁会社を設立。日立製作所とは共同でEV専用モーターの開発を手がける。

17年10月には、国内の四輪車生産体制の再構築を発表。具体的には、電動化など新技術への生産対応のため、1964年に稼働させた狭山工場を閉鎖し、13年稼働の最新生産技術が備わる寄居工場に、21年をメドに集約。そこで蓄積する新技術の生産ノウハウを、海外の生産拠点にも展開する、というものだ。

エコカーをめぐっては、多額の研究開発費や設備投資が欠かせない。充電スタンドの整備やリチウムイオン電池のコスト低減など課題も山積。電池性能の劣化が中古車価格に影響するという問題などもある。

国内の軽を含めた乗用車メーカーは事実上、「トヨタ・ダイハツ工業・SUBARU・マツダ・スズキ」「日産・三菱自動車」「ホンダ」の3つに分かれた。ハイブリッド車でトヨタとホンダが、EVでは日産・三菱自動車がリードするが、新興国を含めたエコカーの世界における本格普及ではまだ、勝敗の行方は見通せない。海外企業を巻き込んだ覇権争いを繰り広げることになる。

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