ロボットが「りんごの皮むき」!!
ベステラは2015年にマザーズに上場、2017年9月には東証一部に昇格した。製鉄・電力・ガス・石油などの大型プラントの解体工事を主要な事業としており、2017年1月期の売上高は41億円(図2参照)。規模を追うのではなく、プラント解体工事のなかでも施工計画や施工管理などのマネジメント領域に業務を特化する「持たざる経営」を貫いてきた。
ベステラが特異なのは、解体工事の司令塔的な役割を担う企業であるにもかかわらず、実際の工事は外注することである。すなわち、人を出して現場で作業を行うのは別の会社であり、ベステラ本体は施工のための重機なども所有していない。では、同社の強みは何なのかというと、自社で開発した数々の独自の工事手法である。
プラント解体の実際の工事は、複数のプレイヤーが参加する分業構造の中で進む。その中のマネジメント領域に特化してきたベストラは、デジタルな情報手段によるイノベーションに取り組みやすい。人材や重機の余剰を危惧する必要のないことも、デジタル・ディスラプションを進めることを容易にしている。
ベステラは、センサー、ロボティクス、画像処理などのデジタル技術を活用することで、解体や更新の工事の現場を変えてきた。2004年には、その第一弾ともいえる「リンゴ皮むき工法」を発表している。
「リンゴ皮むき工法」とは、ガスタンクなどを、りんごの皮をむくように解体していく工法である。従前のガスタンクの解体は、つくった時の逆を追う工程で進められていた。足場を組み、鉄板を一枚一枚はがしていく。はがした鉄板は、大型クレーンで吊っておろす。危険な高所作業をともなう長期の工期が必要となる。
ベステラは、ここにロボティクスを持ち込んだ。鉄を切除するロボットを大型クレーンから吊してタンクの中心部からグルグルと這うように自走させていくのである。切断された鉄は、りんごの皮のようにつながり、ゆったりと地上に降りていく。ポイントはタンクの下部を先に切断することにある。この工法は、風の影響も受けにくく、安全であり、かつ足場も不要で工期も短くなる。