ドラえもんはなぜ「ネコ型ロボット」なのか。ロボットベンチャー「GROOVE X」の林要社長は「精神的にのび太に寄り添うためではないか。ただ声をかけるだけならバーチャルでもできる。しかし、人間の感情には“触れること”に大きな意味がある」という――。
※本稿は、林要『あたたかいテクノロジー』(ライツ社)の第6章「22世紀のセワシ君の時代に、ドラえもんはなぜ生まれたのか」の一部を再編集したものです。
テクノロジーの理想形は「ドラえもん」
「だれ1人とり残さない」。あらためてそれがどういうことかと考えると、いまの資本主義社会のように、自己責任という名のもとに、たまたま現代の仕組みや時流に合った性質を持った人だけが成功する世界のことではありません。
そこに必要なのは、各個人がコンフォートゾーンから抜け出し、新しい環境に身を投じる経験を積むチャレンジを促進することであり、またその結果、たとえ失敗しても「大丈夫」と言ってくれて、やり直しの機会が得られるセーフティネットがあることです。
つねに見ていてくれて、そばにい続けてくれる、絶対的な味方としての存在。何度あきらめても、挫折しても、応援し続けてくれる存在。かといって、決してつねにプレッシャーをかけて成長を強要するわけでもなく、時にいっしょに怠けたり、泣いたりもしてくれる。
そんなパートナーを想像すると、やっぱり、のび太くんのそばにいるドラえもんの姿が浮かんでくるのです。
1969年、藤子・F・不二雄というアーティストが創造し、いまもなお日本中の人に愛されているドラえもんこそが、人類と共生することで、人類が自発的にがんばることができるように元気づけてくれる、ぼくにとってのテクノロジーの理想系です。
そしてぼくらエンジニアが、その理想を画面のなかの二次元ではなく、ともに実世界を体験し、感じ、共感することのできる実在の存在として、形にしていくのです。