「田中角栄」以来の政治家
ついでに最近の動きも復習しておこう。
10月5日付の朝日新聞オピニオン面に掲載された元経済企画庁長官、田中秀征氏の談話を読むと、ここ数日の目まぐるしい政界の流れが実によく分かる。
田中氏は初めに「第2次安倍晋三政権が発足して5年弱、国民の間には政治や政党に対する不満や不信というマグマがたまり、あふれんばかりになっていました。それを解消する勢力が現れれば、ブームを起こす気運は確実に高まっていたのです」と指摘する。
続けて、「(安倍首相は)ここが勝負どころと見た小池百合子都知事のずば抜けた『勘』と『度胸』を読み誤った」としたうで、「首都東京の知事が国政の新党の代表に就くのは常識的には無理筋です。だが、一枚も二枚も上手の小池さんに政界の常識は通用しません」と評価する。
そのうえで田中氏は、小池氏は世襲政治家でなく、「自力ではい上がった創業者型政治家」だと指摘し、「田中角栄元首相以来の存在」と分析しているのだ。この解説は実にわかりやすい。
やはり小池氏は、政界の常識を覆す本物の魔女なのだ。今後、どのような行動によって政界再編を起こすのか。沙鴎一歩は楽しみなのだが、その楽しみを味わうためには、小池氏自身が出馬する必要がある。
新聞社説も「小池出馬」に期待する
新聞各紙の社説も表向きは固いことばかりを書き並べてはいるが、その行間を読み解くと、小池氏の出馬を期待しているのがわかる。
たとえば衆院解散を論評した9月29日付の毎日新聞の社説は「小池氏流の劇場型手法によるとはいえ、国民の選挙への関心が高まってきたことは歓迎したい」と小池新党を評価している。
同じ29日付の東京新聞の社説も「公示まであと10日余り。本人は否定するが小池氏が都知事を辞めて国政進出の可能性も取り沙汰される。民進党の事実上の合流も……」と書くなど小池出馬を否定してはいない。
読売新聞の社説(29日付)は「小池氏は衆院選への出馬を否定するのであれば、安倍首相に代わる首相候補を選挙前に決めるべきだ。合わせて、説得力のある政権構想や基本政策を早急に策定し、選択肢として示す責任がある」と手厳く批判しているが、その裏を返せば小池氏に出馬を促しているようにも受け取れるからおもしろい。
小池百合子という政治家は確かに方便も使うし、嘘もつく。しかし、それは日本の国の将来を真剣に考え抜いているからではないだろうか。政治への不信とあきらめが蔓延するなかで、今回のような動きは実におもしろいと思う。