日本の田舎にもグローバル人材はいる
【三宅】先生は海外の留学経験があり、現在もMOOCを通じて、世界中の人たちと関わりをもたれています。その活躍ぶりは、「グローバル人材」という言葉にふさわしいと思うのですが、この言葉は日本以外では使われないとも聞きます。藤本先生から見て、世界で活躍できる人材の要件はなんでしょうか。
【藤本】グローバル人材というと、すごく大げさな感じがします。私は単純に、外国に出て行って、異なる文化の中に飛び込み、その国の人たちの立場を理解したうえで一緒に活動できることだと考えます。
私もかつては、グローバル人材というと、世界を股にかけて、活躍するアクティブなビジネスマンといったイメージを持っていました。しかし、たとえ日本の田舎にいても、しっかり英語を学び、外国人観光客をもてなしているような方であれば、十分にグローバル人材という言葉にふさわしいと思うようになりました。
【三宅】おそらく、そうした中でこそ本当のコミュニケーション力も養えるのかもしれません。しかも、会話だけでなく、ボディランゲージや近くにある物などを使って、コミュニケーションを取っていけばいいですよね。極端なことを言えば、自分がわからなければ、周りの人に頼んでもいい。
【藤本】そうです。
【三宅】英語学習は、気をつけないと学習のための学習になりかねません。やはり藤本先生が言われるように、必要に迫られて、とにかくコミュニケーションを取らなければいけないという場で磨く英語が強いのですね。
【藤本】私は本当に英語が苦手でした。その中で、どうすれば英語の勉強を楽しめるか、と考えました。私のキッカケとなったのは音楽でした。洋楽を聞いて、何を歌っているのかと興味を持ったのです。自分がこれだったらやれる、というキッカケをどこかで見つけられると学習も捗るはずです。
もうひとつは、海外の人との交流は楽しいということです。東大のMOOCで、昨年から開講している「Studying at Japanese Universities」というコースがあります。これは外国人向けの日本留学入門で、「受講生みんなで、留学準備をしましょう」という内容です。世界中から日本に留学したい受講者が集まっています。日本の留学生の大半はアジアからですが、このMOOCにはアフリカや東欧など普段はあまり東大と接点がないような地域からの留学希望者もいます。なぜ自分は日本に行きたいのか、日本の大学でどんなことを学びたいのか、ということを掲示板に書き込み、交流しているわけです。英語はそうした異文化の人たちの交流に役立ちます。
こういう楽しさにうまく触れられるようなキッカケを作ることができたら、勉強も必ず楽しくなると思います。
【三宅】本日はありがとうございました。
東京大学 大学総合教育研究センター 特任講師。1973年大分県別府市生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。民間企業等を経てペンシルバニア州立大学大学院博士課程修了。博士(Ph.D. in Instructional Systems)。2013年より現職。専門は教授システム学、ゲーム学習論。ゲームの教育利用やシリアスゲーム、ゲーミフィケーションに関する研究ユニット「Ludix Lab」代表。著書に「シリアスゲーム」(東京電機大学出版局)、訳書に「幸せな未来は「ゲーム」が創る」(早川書房)など。