親亡き後の生活を想定し「手抜き」「手放し」をする
そこで家計簿を拝見し、費目ごとに確認していくなかで、改善点が見えてきました。私が特に注目したのが次の3つです。
(1)食費
一般的に、大人1人の食費の目安は月1.5万円~2万円程度ですが、3人で9万円とかなり高めです。3人とも大食漢というわけでもなく、お酒も飲まない。食事を担当している母親から話を聞くと、食費が高い理由が見えてきました。
母親は、長男の健康維持のために3食の食事とおやつを手作りで準備するために、1日中、家を空けることはないそうです。確かに、栄養バランスのとれた食事をすることは大切ですが、親亡き後との生活落差が大きくなるほど、長男もつらくなるのではないでしょうか。
目指すのは月2万円のカットです。これからは、ひとり暮らしを想定した予行演習と思い、手作りのおやつは徐々に回数を減らしていく、食事はたまにはレトルト食品で済ましたり、1日家を空けて、冷蔵庫にある残り物を食べてもらったりするなど、長男のために「手抜き」を心掛けてもらうよう提案しました。
(2)ペット代
ペット関連費が毎月7000円計上されていました。ペットは家族同然。必要な支出の位置付けですが、ここにも問題点が見えてきました。今年、長男がかわいがっていた愛犬が寿命で亡くなり、うら寂しいだろうと思った両親が、知り合いから子犬を譲り受けたそうです。しかし、長男からは意外な反応が……。「なぜ、また飼うのか?」と言われたそうです。おそらく、もう二度と悲しい思いをしたくないというという気持ちと、小型犬の寿命は15年程度、長生きすれば20年と生きるかもしれません。そう思うと、両親が面倒を見られなくなったらどうするのか? という不安がよぎったのではないでしょうか。
親亡き後、残されて困るものは「手放す」ことも大切です。母親は言いました。
「親が良かれと思ってやっていることが、結果として子供にとってはありがた迷惑となっている場合もあるのですね。われわれの優先順位は、長男に必要なお金を残してやることです。長男にとっても、愛犬にとっても、そして家計にとっても、最善となるのであれば、譲渡先を探してみることにします」
▼貯蓄の取り崩しは1800万から1000万に圧縮できる
(3)自動車関連費
車は、両親はほとんど乗らず、長男が、たまにコンビニや本屋に行くのに使う程度とのこと。今の利用状況だと、買い替える必要性は低いと思われます。車も維持・管理が必要となるため、親亡き後、残されて困るものの1つです。車の買い替え時期を「手放す」タイミングとして、自転車に乗り換えることを提案しました。これにより、年間の維持費20万円と、乗り換えにかかる費用が不要となります。
(1)~(3)以外にも、保険の見直しや他の改善をはかることにより、年間生活費は340万円に抑えることができ、車の買い替え代も不要となります。また、あと7年間は貯蓄を増やせることになり、親の代での貯蓄の取り崩しは、当初の試算1800万円から1000万円程度に圧縮することができます。
ただし、それでも、長男のために2000万円を残すためには、あと300万円足りません(預貯金2700万−1000万=1700万)。どうすれば捻出できるのか……そこで、お持ちの空き家についてお話を聞いてみました。