「直に会うのは週に一度」でも高収益経営

ちなみに、私が経営する会社のメンバーは、社長である私と、従業員のY嬢の2人だけである。Y嬢も私もそれぞれオフィスを構えており、同じ空間で仕事をするのは週1日だけだ。そのときに最近の悩みを打ち明けたり、問題点を共有したりする。そして、一緒に仕事をする日は「あの原稿、早く書きなさい!」とY嬢から怒られたりもする。この日だけは互いに仕事ぶりを監視し合い、業務をできるだけ推進していく。だが、他の曜日はまったく別行動である。

こうした仕事のスタイルによって、「コミュニケーション不足に陥った」「報連相が滞り、売り上げが落ちた」みたいなことがあるかといえば、そんなことはまったくない。我々はとんでもない長時間労働で消耗することもなく、それなりの高収益企業を運営している。互いに残業を強要したこともない。とにかく2人がやらなくてはいけないことを、地道にやり続けているだけだ。

しかし、いつも一緒にいた場合、もしかしたら私はY嬢に「明日、千葉まで取材に行ってくれ」などと言ってしまうかもしれない。電話取材でも済む話なのに、「いちおう現地も見ておくか」と思い付いて、わざわざ彼女を派遣してしまうかもしれないのだ。

「たまたまその場にいた」というだけで“むちゃぶり”されてしまうような環境をなくせば、長時間労働・過重残業は、それなりに減らせるのではないだろうか。少なくとも「とりあえず、資料をつくっておいてよ」「念のため、整理しておいて」といった、思いつきの業務、必要性を吟味しないまま「やらせる」ことを目的にしたような業務の数は、激減するだろう。

ちなみにこの7年間、Y嬢と2人で会社を経営してきたが、弊社も社員どうしが適度に距離を置いているからこそ、無駄な残業は回避できたのかな……とつくづく感じている。

【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・残業がクセにならないよう、とっと仕事を終えて、とっとと帰れ。
・仕事は「振りやすい人」に集中する。苦しければ、身体を壊す前に逃げろ。
・「仕事を振りやすい部下」にばかり業務を押し付ける管理職はゴミだ。反省しろ。
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。
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