好奇心が旺盛な生徒は伸びます!

【三宅】よく覚えておられますね。いまのお話で、スピーキングの宿題とテストにしっかり取り組んでいこうと再認識しました(笑)。

そこで、英語教育の未来についてお聞きしたいと思います。ICT教育、なかでもオンライン学習は英語との相性がとても良いと思っています。でも、年配の先生にとっては、それを使うのは苦手かもしれません。けれども、若い人たちはデジタル・ネイティブですから、あたりまえのように使いこなしているわけです。もちろん、公立校であれば予算等のこともあり、十分な設備をそろえるには時間がかかるかもしれませんが、先生はこれからの英語教育におけるICT活用について、どのような意見をお持ちでしょうか。

【谷口】私はデジタル・ネイティブじゃなくて、デジタル・イミグランツ、アナログの世界からデジタルに移民してきた人間です(笑)。決してITは得意ではありませんが、英語の授業に関して言えば、「何を見せるか」という意味でソフトの選択が大事だと考えています。その選択眼とセンスは大切でしょうね。幸い「達セミ」にはICTの達人がいっぱいいますので、その人たちから教えてもらえるはずです。

【三宅】これからの時代の英会話は、必ずしもアメリカやイギリスに留学、出張するから学ぶということだけではなく、東南アジアやインドでもノンネイティブ同士で会話する機会が、どんどん増えていきます。そこでは、きれいな英語というよりも通じる英語が求められると思います。

【谷口】勤務先の小平高校でも「オンライン英会話」を、週に1回取り入れています。東京都の政策です。タブレット端末を各自が持ち、フィリピンの人たちと自由に話をするわけです。わずか30分ですが、生徒たちは非常に楽しそうに会話をしています。

【三宅】それは高校生にとっては得がたい経験ですね。そんな機会があれば、英語を学習する意欲が全然違ってくるでしょう。

【谷口】お互いが理解し合うためには、相手にわかるように文化とか生活状況も伝えないといけません。もし日本の高校生が「クラブ活動で夏も学校に行っている」という意味で“I don't have my summer vacation.”と言ったら、フィリピンの高校生は、日本には夏休みがないと誤解してしまう可能性もあります。

『対談(2)!日本人が英語を学ぶ理由』三宅義和著 プレジデント社

【三宅】この事例だけを取っても、やはり最近の高校生の話す力は間違いなく高くなっていると感じます。校内にはネイティブの先生もいるし、ICTを活用したコミュニケーション教育もある。身の回りに英語があふれていると言っても過言ではないでしょう。先生からご覧になって、伸びる子どもというのは、どんなタイプですか。

【谷口】好奇心が旺盛な子は伸びます。彼らは、言葉の仕組みを含めて、いろんなことに興味を持っています。しかも、その範囲が広いということでしょうか。そんな生徒にはどんどん新しいことを教えていくべきなんですね。

いつも「達セミ」で口にする言葉があります。およそ100年前に、アメリカの哲学者であるジョン・デューイがこのように言いました。

≪If we teach today as we taught yesterday, we rob our children of tomorrow.≫

「もし、私たちが昨日教えたように今日も教えたなら、私たちは子どもたちの明日を奪ってしまう」という意味です。青少年の教育に携わるすべての人が心すべきことだと思います。

【三宅】本日はありがとうございました。

(構成=岡村繁雄 撮影=澁谷高晴)
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