ITの時代、ますます人間力が大切に

人間は欲望から、新しいものを発明してきました。でも、今皆さんに何が欲しいかと質問しても、なかなか出てこないんですよね。新しい機能やバリエーションが追加されたりはしますが、今までにないもので、人間が欲しいと思うものがもうない。この状況で、今後経済をインフレのほうにもっていくのは至難の業だと感じています。

KCJグループ代表取締役社長兼CEOの住谷栄之資氏。

日本の人口は1億2675万人。これが50年後には8674万人に減少すると言われています。出生数も減り続けて、昨年は100万人を割りました。その上、シェアリングエコノミーなどが盛んになると、ますますモノが売れないですよね。さらにITの分野ではAR(拡張現実)やVR(仮想現実)といった技術が発展し、自分で創造することができない人が増えている気がします。

非常に難しい時代です。けれど、そんな状況でも僕は、人間の力を発揮することで社会をより良くすることができるのではないかと思います。科学技術が進化するほど、「人間力」が退化していきます。「人間力」とは、体力、知力、五感、思いやり、コミュニケーション力など、人と人が関わっていくための基本的な力のこと。これをもっともっと強めていかなければいけません。身近な例を言えば、エレベーターやエスカレーターを使うより階段を歩く方が足の筋力を高められます。

時代のキーワードは、「サイエンス」と「アート」だと考えています。アートとは、つまり人間ということ。この掛け合わせです。そして「ソーシャル」。ITが発達した今だからこそ、より意識して、みんなで話し合う機会を持ち、知恵を出し合っていくことが大切ではないでしょうか。

住谷栄之資(すみたに・えいのすけ)
KCJ GROUP 社長
1943年、和歌山県田辺市生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、藤田観光に入社。直島開発プロジェクトを手掛ける。69年、WDIに入社後、取締役として主に外食事業に経営参画。ケンタッキーフライドチキン、トニーローマ、ハードロックカフェなどのライセンスを取得し、開発運営。同社を60歳で退職後、キッズシティージャパン(現:KCJ GROUP)を立ち上げ、日本でのキッザニアのライセンスを取得。2006年にキッザニア東京、09年にキッザニア甲子園をオープン。
(構成=新田理恵 撮影=向井 渉)
関連記事
起業成功から一文無し「マネーの虎」どん底からの教訓
47歳の大社長が今でもリングに立つ理由
萩本欽一インタビュー「ボクは30代は『頭』、40代は『目』で頑張った」
レジェンド・山本昌、チャレンジングな第二の人生
本田圭佑「でかいことを次々やりたい」貪欲人生録