4歳と7歳だった「孫」のおかげ

外食事業のほかにも、若い人にできるだけ海外に行ってほしいという思いがあり、留学支援事業などいろいろな仕事を経験。そして60歳という区切りの年にWDIを退職しました。

悠々自適な生活を送ろうとしましたが、一方で「まだ何かできることがあるのかな」という思いも抱いていたところ、米国人の友人からメキシコに面白い施設があるので行ってみないかと誘われたんです。それがキッザニアでした。2004年、61歳のときに見に行きまして、ちょうどニート問題などが言われ出した日本でも、事業として成り立つのではないか、子どもたちの成長に役立つのではないかと感じ、06年10月に「キッザニア東京」を、09年3月に「キッザニア甲子園」をオープンします。

7月に開催された「第8回わかやま未来会議」。その場にいる全員が和歌山関係者ということもあり、アットホームな雰囲気で質問や意見も活発。

メキシコの視察には当時4歳と7歳だった孫も一緒に行きました。もし彼らがいなければ、キッザニアはやっていなかったと思います。孫たちは、海外に住んでいたので、英語は話せるけれどスペイン語は話せませんでした。しかしながら、言葉がわからないのに、一度も帰りたいとは言いませんでした。また、日頃から子どもたちの将来はどうなるのだろうという思いがあったので、「キッザニアが彼らの成長に役立つのでは」と直感的に思ったんです。

 

熱意、意欲、パッション

メキシコのキッザニアで初めて知った言葉が「エデュテインメント(楽しみながら学ぶ)」でした。エデュケーションとエンターテインメントを掛け合わせた言葉で、「子どもたちに生きる力を身につけてほしい」というのが、キッザニアの基本コンセプトです。

子どものうちから職業意識を身につけていると、勉強への向き合い方も違ってきます。憧れの仕事に就くためには勉強しなければいけないと考え、仕事のために勉強をするようになります。キッザニアに来場した子どもたちの親御さんから、子どもたちのそういった変化をよく聞きます。

企業が若い人に何を期待しているのかというと、熱意、意欲、パッションだと聞きます。そして、こういうものは、小さい頃から培っていかないと、なかなか身につきません。

加えて、若い人に身につけてほしいのは、「クリティカルシンキング」。物事を深く考える力のことです。それから「クリエイティビティ」。欧米人に比べ、日本人はこの能力が劣っていると言われていますが、これからますます重要性を増すと思います。そして、「コミュニケーション」。「私はちゃんとコミュニケーションをとっている」と言う人も、本当に内容をタイムリーに伝え合えているのかというと、疑わしい部分があると思います。人間同士、コミュニケーションをいかにうまくとっていくかがすごく大事。こうしたことも、子どものうちからキッザニアの中で体験してもらえればと思っています。