年商100億円から一転、25億円の負債を抱え「どん底」生活に墜ちた「マネーの虎」。借金返済からV字回復を成し遂げた起業家が「どん底」で見たものとは?
ポケットに残ったのは5万6800円
『¥マネーの虎』(※)に出演していた頃は、会社の売り上げも100億円に届こうという時期で、株式上場も目前に控えていました。ところが2005年の春、英国MGローバーが経営破たんして、同社の輸入代理店だった弊社も25億円の特別損失を抱えることになったのです。
当時、会社の純資産は45億円ぐらいあったので、債務超過にはまだ20億円ほど余裕がありました。でも一方で銀行からの借り入れが35億円あり、その返済を迫られることになりました。
純資産といってもショールームや在庫のクルマの価値で、目の前に現金があるわけではありません。それらの資産が額面通りに売却できるはずもなく、資産を全部処分しても返済できるわけがない、再起なんて絶対無理だというのが大方の見方でした。なかには、処分できるものをさっさと現金化して、海外にトンズラしてしまえばいいと言う人もいましたよ。
僕自身、倒産や自己破産も考えましたが、結果的にはきちんと借金を返済して再起を図るという道を選びました。今考えると、根拠のない過剰な自信に満ちあふれていたとしか思えませんが、再起のためには銀行の債務から逃げ出すわけにはいかなかったのです。
それから借金返済の日々が始まるのですが、ローバーの破たん後も最初の半年ぐらいは何とかお金はまわっていました。全国のショールームや在庫のクルマを売却して返済にまわし、ほんとうにキャッシュアウトしたのが半年過ぎた頃のことでした。
もともと貯金も数十万円しかなく、その個人資産も会社の返済に全部当ててしまっていましたからね。今でも覚えているけれど、ATMに残っていた全額、5万6800円を引き出してポケットに入れて、それが無くなったら一文無しという状況でした。ほんの一瞬ですが、短期的には住むところもありませんでした。渋谷のカプセルホテルに泊まったり、公園で寝たりしたこともありました。