日本の勤め人の約7割は中小企業勤務です。そこでの典型的な課題は「業容の拡大につれて社長が現場から離れてしまう」ということ。しかし、急成長を遂げつつある中小企業「DDTプロレスリング」は違います。社長の高木三四郎氏は、47歳にして現在もリングに立つ現役レスラーです。経営者と文字通りの“プレイヤー”を兼任する理由について、高木氏は、「そのほうがマネジメントがうまくいくから」と言います。特別インタビュー前後編の後編です。前編(http://president.jp/articles/-/22122)とあわせてご覧ください。

異色の文化系プロレス団体「DDTプロレスリング」の高木三四郎社長は、47歳を迎えた現在でも、レスラーとしてリングに立っている。最近では、新日本プロレスのリングをメインに活動する鈴木みのる選手に、東京ドームでの「路上プロレス・シングルマッチ」を要求するなど、選手としての活動も活発だ。経営者として多忙な中で、リングに上がり続けるのはなぜなのか。そこには、中小企業の経営者に共通する理由があった。

なぜ今もリングに立ち続けるのか?

――他団体の経営も手掛けるほど経営手腕が評価されている高木さんですが、今でも現役のレスラーを続けてらっしゃいますよね。

【高木】ええ。ただ、プロレスラーとして活躍したいとは、今は全然思っていないですね。むしろ自分がリングに立ち続けているのは、マネジメントのひとつでもあるんですよ。

――というと?

【高木】プロレスラーというのはなかなか難しい人種で、スタッフの言うことを素直に聞く人は少ないんです。「受け身も取れないヤツの言うことなんか聞いてられるか」って意識がある。そういう選手たちを束ねるためには、自分も体を張っていると示すことが一番手っ取り早い。だから僕は今でもリングに立っています。

――それはプロレス以外にも通じる考え方かもしれないですね。現場とマネジメント層の乖離というのは、経営における大きな課題のひとつです。

【高木】プレイヤーはプレイヤーの言うことしか聞かないですから。中小企業でよくありますよね。社長が一番の営業マンで、社員を引っ張っているみたいな話。トップが現場に立っているから、社員もついてくるんだろうと思います。

――つまり、高木さんが今でもリングに立っているのは、中小企業の社長さんが、毎朝会社の玄関を掃除しているみたいな感覚に近い?

【高木】そうです。あとはまあ、ストレスの発散です。

――そこはプロレス団体ならではですね(笑)。やっぱり経営者としてストレスはありますか。

【高木】そりゃあ、ありますよ。ほかの業種の経営者だったら、酒を飲むとか趣味に走るとかあるんでしょうけど、僕はリングでストレスをぶつけられるのが、この仕事のいいところです(笑)。