一部からは反発も受け、取引中止となった会社もあったが、主力の「亀の子束子」に加えて「白いたわし」という魅力のある商品を持つと、問屋の対応も変わっていった。

「他所者」が手がける老舗改革

企業の現場では、「これまでのやり方を変えるのは、しがらみにとらわれない他所者(よそもの)や若者」ともいわれる。実は今回登場した2人は、以前はまったく違う業界で活動していた。

亀の子束子西尾商店の西尾智浩社長。入社以前はミュージシャンだった。

社長の西尾氏は、長年、ギタリストとして音楽業界に身を置いていた。取締役企画部長として入社したのは2010年。45歳のときだった。

「父(4代目社長の松二郎氏)の再三の誘いに応じて会社に入社したのは『時間』としかいいようがありません。昔ながらのやり方が通用しないようになり、会社としてはギリギリのとき。家族経営の負の部分もみえつつありました」(西尾氏)

まず取り組んだことは商品構成の見直しだった。「タワシ一本足」とならないように、スポンジにも力を入れるようにした。

「たとえばフライパンを洗うのにはタワシが向き、デリケートな皿を洗うのはスポンジが向くなど、食器や調理器具の材質に合った最適の洗い方があるのです」(西尾氏)

かつては売上構成比に占めるタワシとスポンジの割合は「97%: 3%」だったが、現在は「75%:25%」とバランスがよくなった。

一方の鈴木氏の入社は2013年、フランス系自転車部品メーカーからの転職だ。同氏の父親も役員として在籍する。英語も堪能な鈴木氏は、前職と現職をこう比較する。

異業種出身のマネージャー・鈴木昭宏氏

「実は、亀の子束子の行く末については全然心配していませんでした。前の会社はブランド意識が強い会社で、そのやり方を応用すれば何とかなるだろうと。しかもフランスのモノを日本人に売る前職とは違い、日本のモノを日本人に売るという販売・マーケティングです。これだけ日本人に浸透しているブランドの強みが生かせると思いました」

鈴木氏の思いを後押ししてくれた調査もある。亀の子束子に対して、ネガティブな印象を持つ人がほとんどいなかったことだ。西尾氏はこう語る。

「白いたわしや新カタログを広めようとキッチンウエアの展示会にも出展し、セレクトショップからも声がかかるようになりました。今年の『亀の子束子の110年』では、ビームスとユナイテッドアローズというセレクトショップとコラボレーションした商品も展開しています」