2014年5月、池山さんは初代WBO女子世界アトム級王座を奪取。以降、今回11月の取材まで4回の防衛を重ねてきた。「女フォアマン」(※2)の異名で知られるように、その強さの秘訣は、圧倒的な手数とスタミナにある。
JBCは「負けたら引退」と勧告
「女子は1ラウンドが2分間しかありません。スピーディーにやらなくては、すぐ時間が経過してしまうので」
そのなかで山場をつくり、観客へのアピールも欠かせない。
「女子ボクサーはガチで、がんがん打ち合う。そこが面白いというファンの声もあります」
一発、いいパンチをもらうとカッとエキサイトすることも?
「私はないです。むしろ、今ので点をとられた、と焦ります」
若手に負けたくない、という意識は、「リングに上がれば、条件は同じ。年齢は関係ないです。考えたこともありません」。
いわゆる必殺技の類を身につける練習はしているのだろうか。
「トレーナーから、これがいいんじゃない、と薦められ、ガゼル・パンチを磨いています」
オールドファンにはお馴染みの元世界ヘビー級王者、フロイド・パターソンのあみ出したパンチだ。
「JBCから負けたら引退、と勧告されています。たとえ敗れても、ボクシングは続けます」
金や名誉には眼もくれず、ひたすら好きな道を「勇猛邁進」(池山さん造語)。これまでにないボクサーの生き方は、まさに「レジェンド」に値する。
2016年12月13日に東京・後楽園ホールで行われる5度目の防衛戦にむけて、
「今度の相手はWBA前チャンピオン。王座統一戦にも出場されている方なので、いまも世界チャンピオンだと思っています。こちらも統一戦の挑戦者のつもりで、とくに気合いを入れてがんばります」
と微笑んで、リングに戻った。
※1:岡山市出身で日本人女性初のオリンピック陸上競技メダリストとなった故・人見絹枝選手の名を冠する市民スポーツ顕彰。池山さんの受賞は、犠打の世界記録を更新した元読売ジャイアンツの川相昌弘選手に次いで2人目。
※2:46歳8カ月で4度目の防衛に成功し、男女合わせて国内最年長防衛記録を更新した池山さん。目標に掲げた元世界ヘビー級王者ジョージ・フォアマン選手がもつ年長記録、46歳3カ月を上回る「フォアマン超え」を果たす。
1969年、京都府生まれ。県立岡山操山高校卒業後、岡山市役所に就職。健康維持のために始めたボクシングに魅せられ2003年プロライセンス取得、同年白星デビュー。06年日本ミニフライ級王座獲得、08年38歳で女子B級プロライセンス合格。14年、初代WBO女子世界アトム級王者。以降6度の防衛を果たし現在に至る。フュチュールジム所属。右ボクサーファイター型。JBC公認後のプロ戦績は、14戦10勝(2KO)2敗2分。移籍後8戦6勝2分(2017年7月現在)。