3. 超高齢化社会
日本の高齢化が進んでいる。半世紀前は1桁だった65歳以上の高齢者人口比率は、今や26.7%で世界トップクラス。35年には3人に1人が高齢者になる予測もある。
長寿は世界的な潮流だ。平均寿命が100歳を超える日も遠くないと言われ、マウスの動物実験において若返りに成功した報告例も。
「こうした『寿命革命』を後押しするのは、バイオテクノロジーの発展です。不老不死、遺伝子組み換え。クローン人間の問題を含め、バイオテクノロジーは生命とどう関わるべきか、議論しなければなりません」
「しかし人間の生命に対する人工的な技術介入に批判的なバイオ保守派は、しばしば『倫理的に問題がある』『人間の尊厳を侵害する』といった結論を導きだします。大きな問題は、人間の能力を増強することがなぜ人間の尊厳を侵害するのか、説明できていないことです。今、新しい技術が誕生して使える状態なのに、嫌悪感から議論や研究が滞るのは賢明だとは思えません」
一方で哲学者ニック・ボストロムは、応用科学や合理的方法によって人間の本性は改良可能で、知的・身体能力を拡張できるという「トランスヒューマニズム(人間超越主義)」を提唱し、新しい可能性に言及した。ただし肯定派も否定派も、バイオテクノロジーが人を「ポストヒューマン(人間以後)」へ導く認識では一致している。人はどこへ向かうのだろうか。