今後10年~20年で47%の仕事が自動化

オックスフォード大学でAI(人工知能)の研究を行うマイケル・A・オズボーン博士は、「今後10~20年程度で、アメリカの総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高い」としている。

たとえばトラック配送やファストフードの受注などにおいて、機械が得意な単純作業はAIが人間の肩代わりをするという。ほかにも、税務処理やローン査定などデータを蓄積することで行える作業部分には、動員される人員は削減されつつある。

そればかりか、最近では高校生の論文を採点するアルゴリズム(コンピュータの処理手順)を作ってみると、人間の採点と一致。「眼球の写真から 糖尿病性網膜症を診断する」という課題で優勝したアルゴリズムは、人間の眼科医の診断と同様の結果が出るなど、機械がさらに複雑な業務をこなせるようになっている。

フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏は、昨年100時間かけて作った家庭用AIを「Javis(ジャービス)」と名付け、その映像をフェイスブックに掲載した。そこでは、自宅の照明や室温のコントロール、家電製品やセキュリティの制御、子供の世話までしてくれる、執事のようなAIシステムの構築を目指している。ジャービスの声をモーガン・フリーマンに演じてもらうほどの力の入れようだ。

たとえば、音声を認識して家を制御してくれるAIに「タオルを取って」と言えば投げてくれるし、「寒い」と言えば温度をコントロールしてくれる。もう少し細かく、「もっと軽い感じの音楽を流して」「子供が起きたから電気をつけて」といった注文にも対応。来客があれば、予定していた客か、不意の訪問者かなのかまで見分けてくれるのだ。

ザッカーバーグによる、五感すら持ち合わせるAIの予見

ザッカーバーグ氏は、フェイスブックにこんな風に書いている。

「私は『5年か10年で機械は、見る、聞く、触る……といった人間の五感よりも優れた感覚になるだろうし、言語も習得できるはずだ』と予見していた。ジャービスを開発して、こうした機械の進歩のすさまじさを確信できた」

人が数十年かけて読んだ書物を、機械はものの数分で記憶するし、写真診療なら1日数十万件くらいこなす。多量のデータを処理したり、単純なパターンで繰り返されたりする作業は、機械が人間に勝っていることは明らかだ。さらにプログラミングを重ね、学習が進めば、今できることの数万通りくらい応用がきくようになるかもしれない。

現段階ではまだ“単純作業”の肩代わりにすぎないが、やがてAIは人間の“五感”に取って代わる可能性も高いのだ。

それでももちろん、機械にできない作業は確実に存在するはずである。ザッカーバーグ氏も、さまざまな可能性を模索し、その進歩は著しいとしながらも、機械には「唯一できないことがある」としている。

「AIはまだ“仕事を理解する”域には達してはいない。人の言語を理解し、顔を認証し、話し言葉を理解するなど、すべては認知技術の基本的なパターンの上に構築されたバリエーションにすぎない。コンピュータにたくさんの例を示せば正確に理解する。しかし、それをもとにアイデアを生み出す方法はわからないし、まったく違うことに応用することもできない」とザッカーバーグ氏は書いている。