自動運転技術が普及すると、自動車産業自体が岐路に立たされます。ほぼ間違いなく起きるのは、自動車は最終製品ではなくなるということです。顧客が求めているのは、自動車ではなく、移動手段。そのためウーバーのような「移動」を提供する会社が、自動車産業をのみ込む可能性が出てきます。

移動できれば「自動車」である必要はない

顧客は、ウーバーがどのメーカーの車を使おうが、無人自動車だろうが、あまり気にしない。それどころか、移動さえできれば、「自動車」である必要さえないかもしれません。自動車メーカーは、ウーバーと同じ「移動」を提供するレイヤー(層)のビジネスを取りにいくのか、あるいは、ウーバーが所有する「乗り物」の車両整備というレイヤーを取りにいくのか。自社の事業をどう位置づけるか、どの部分で勝負するのか、あらためて問われることになります。

一方、経営の意思決定のような仕事は今後も残り続けるはずです。ただ、意思決定をサポートする、経営者に対する秘書、弁護士に対するパラリーガル、コンサルタントに対するアシスタントはコンピュータに代替される可能性が高い。資料を集めたり、内容を必要な形に直す技術は、人工知能というよりも検索エンジンといったほうが正確かもしれませんが、領域を拡大していくでしょう。

最近、ニュースで「人工知能」という言葉が取り上げられることが多くなってきました。「人工知能」と聞くと、何か特別なもののように感じますが、実は広い意味ではIT技術の擬人化を指すことも多いです。メディアで「人工知能」という言葉を見たときは、IT技術、例えば検索エンジンでできることを指しているのか、あるいは深層学習など最新の技術によるこれまでにない進展なのかという見方をすると理解しやすいかもしれません。