【塩田】蓮舫さん自身は憲法についてどういう立場に立ち、どう考えていますか。

【蓮舫】国民の声にどこまで謙虚に丁寧に耳を傾けられるか。ここに尽きます。安保法案のときの反対のうねりや、さまざまな立場の人が首相官邸前で発言したのを見て、国民は憲法の尊さをすごくわかっていると思いました。専守防衛を破壊し、平和主義の根本を揺るがすような憲法改悪から第9条は絶対に守る、というのが国民の声と私は思っています。安倍首相は、教育基本法でも、自分の考える愛国心を教えるんだという権力者的な上から目線で、国民を信頼していないんだなとわかりました。国民の声がすべてです。

ただ、それ以外の財政再建のあり方や、子どもの人権、環境の条項、地方分権といった点では、われわれは去年、民進党の基本的政策合意をまとめたとき、必要な条文の改正を目指す方向でまとまりました。変えるべきを変え、守るべきものは守る。護憲だけの時代ではなくなったと思っています。

【塩田】安倍首相の最大の挑戦目標は改憲ですが、今、自身のカラーを出したいと思っているのは外交政策だと思います。「地球儀を俯瞰する外交」を唱えていますが。

【蓮舫】いろいろなところに外遊し、国民の税金を使って随分、気持ちよく経済支援を決めていますが、ばらまきの成果は? と問いたい。各国のトップと会って華々しくやっていると、成功しているかのような印象がありますが、実があるのかという点でトレースされていないところがあります。私たちも、成果は何か、あぶり出していかなければ。

民進党の公認で戦う仲間を全力で支援する

【塩田】朝鮮半島情勢が緊迫化し、安倍首相の積極姿勢が目立っていますが、一方で、北朝鮮問題など、国民の目を外交にくぎ付けにして、国内で厳しい追及にさらされそう問題を意図的に回避しようとする作戦では、と見る人もいます。

【蓮舫】外交ですから、そうではないと願っています。ですが、時同じくして首相夫人の国会への証人喚問、森友の問題、閣僚の失言や暴言、自民党議員の不祥事などをすべて覆い隠した一方、北朝鮮情勢の緊迫化を極端にクローズアップしたのは偶然の一致ですかと言いたい。

【塩田】東京で小池百合子都知事の奮闘が注目を集めています。

【蓮舫】知事就任後、こんなに腐っていたのかと思える自民党に委ねていた都議会の失政をただそうとする努力は率直に評価します。小池都政については、民進党都議団は都議会与党宣言を、民進党東京都連も与党宣言をしていますので、進めようとする改革は共に進めたいという姿勢です。

過去に環境相として取り組んだ改革、環境をよくしたいという思い、新しい発案、柔軟性については、すごい人だなと思っていました。他方、かつて雑誌の鼎談で「核武装の選択肢は十分ありうる」などと発言された点では、私の考えと相いれない理論を持っていると承知しています。

【塩田】7月に都議選が控えていますが、現在の小池ブームの直撃を受けるのは民進党では、という声もあります。民進党を離党して小池グループに転じる動きも出ています。

【蓮舫】離党者が出たことは残念。民進党の公認で戦う仲間を全力で支援することに尽きる。地方自治ですから都連の問題で、組織論としては、公認も離党者の処分も基本は都連の権限。党に対するいろいろな声はしっかり受け止めないといけないと思いますが、組織論を越えてはいけないと思っています。

蓮舫(れんほう)
民進党代表
1967(昭和42)年11月、東京都生まれ(49歳)。貿易業の台湾人の父と日本人の母の長女として生まれる。青山学院大学法学部公法学科卒業。大学在学中に音響機器メーカー・クラリオンのキャンペーンガール「88年度クラリオンガール」に選ばれる。テレビのワイドショーなどに出演した後、93~95年にテレビ朝日の報道番組「ステーションEYE」のメインキャスターを務める。93年に結婚。95~97年に北京大学に留学。2004年7月の参院選に東京選挙区から民主党公認で出馬して当選(以後、参議院議員3期)。09年10月、民主党政権で内閣府が設置した事業仕分けワーキンググルーブで農林水産省・文部科学省・防衛省担当となり、「仕分け人」として活躍して注目された。10年6月に菅直人内閣で内閣府特命担当相(行政刷新)に就任。11年9月に野田佳彦内閣でも内閣府特命担当相に起用された。民主党幹事長代行、代表代行を経て、16年9月の民進党代表選で前原誠司、玉木雄一郎を破って代表に就任。民進党では野田グループ所属。1男1女の母。
(撮影=尾崎三朗)
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