竹内氏には、花王専務のほかに重要な役職がある。完全子会社である「花王グループカスタマーマーケティング」の社長だ。社員数1万5000人を超える販売会社。これまで国内事業を伸ばしてきた花王の強みのひとつだ。

卸を通さず直販するスタイル

今回の取材を始める前、花王の競合他社の社員に話を聞いた。ライバルとして花王をどのように見ているのか。

「商品はたしかにいい。けれど、うちも負けない商品はつくっている。やはり販売会社の存在で違いがでる。自社で物流までまかなうヒト、モノ、カネの圧倒的な規模によるところが大きい」(国内競合メーカー営業部統括)

「販社が持つ国内の細部にわたる販路は、我々では到底築き上げられない」(外資競合メーカー営業マネージャー)

と口を揃える。一般的な認知度は低いが、投資家筋でも「販売会社の存在は花王の強みとして定説」(クレディ・スイス証券の森将司氏)だという。


消費者まで一直線でつながる販売組織

花王グループカスタマーマーケティングの組織について、簡単に説明しておこう。花王の研究開発、ブランドのマーケティングは基本的に本社が担うが、販売会社である花王グループカスタマーマーケティングも積極的にマーケティングに関わる。

全国8拠点に支社を置き、さらに各都道府県にも複数の支店を持つ。もともとは各地の卸店が出資・設立した地域販売会社が集まってできた組織だ。つまりシンプルに言うと、卸を通さない、直販するスタイルを取っている。全国各地の量販店、ドラッグストアや薬局に商品が届けられるまで、開発から物流までのすべてを自社内でカバーしているのだ。