せっかく難関校に合格したのに、ずっと「最底辺」

こうした事実を踏まえて、親がわが子を伸ばす志望校選びをするには何に注意するべきだろうか。

中室准教授は「お子さんが入学したあと、どのくらいの成績を取れるかを考えて選ぶことが大切だと思います。ある程度、いい成績が取れる学校に入ったほうが、成績があと伸びする可能性が高いです」とアドバイスする。

実際、無理して難関校に合格できたのはよかったが、入学後に成績が低迷し、浮上できなくなる子どもはいる(開成や灘などの名門中学校では「深海魚」や「ヘドロ」と呼ぶらしい)。親が「偏差値が1ポイントでもいい学校」と無理させるのはいいことではないだろう。

「すべり止め校」で上位成績をキープすれば大学進学に奏功

折しも受験が変わろうとしている。

いわゆるAOを含む推薦入試が増えて、国立大学でも2021年までにその推薦入試の枠(定員)が全体の3割に拡大されるという。その際、評価されるのは高校時代の成績だ。偏差値の高い一貫校に入学しても学校内の定期テストでの成績が悪ければ、推薦合格の道は遠のく。

ということは、むしろ中学受験では比較的余裕で入れる「すべり止め校」を選択し、学校内で上位の成績をキープするほうが大学進学では功を奏するかもしれない。中学受験の模試判定でDやEの難関校に補欠合格でもいいからと必死になるより、偏差値ランクが落ちても模試判定がA、B、Cの学校を選んでもいいのではないか。

もちろん、受験勉強の期間は偏差値や成績を上げる努力を惜しんではいけないだろう。ただ、親は偏差値至上主義になってはいけない。また、逃れられない競争のなかで友達の成績が伸びたからとわが子が劣等感を抱いたりやる気を喪失したりしないように、親は子どもの自己効力感を養ってやることが大事だ、と中室准教授は言う。

「自己効力感とは、自分はやればできるという気持ちです。こうした思いが持てるかどうかには、日ごろの親の言動が大きいです。子どもの成績が下がっても、『またがんばれば大丈夫よ』と言ってあげる。こうした言葉を普段からかけられている子どもは、自分はやればできるという気持ちがあるから、友達の成績が上がった時に『私も頑張ろう』と奮起できるのです」

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