日本の子どもが「自分の順位」をすごく気にする理由

友達の成績が上がる(成績が高い集団に属する)と、自分の成績は下がってしまう日本の子どもたち。なぜそうなるのか。理由を中室准教授は次のように分析している。

「社会心理学に『社会的比較』という言葉があります。これは他人との比較によって、自分の相対的な位置を把握しようとする心理を指します。こうした心理が日本人は非常に強いのだと考えられます。つまり、日頃から子どもたちはクラスのなかでの相対的な位置をすごく気にしているのです。だから、友達の成績が上がると、自分の相対的な順位は下がったと感じて、学習意欲が下がってしまう。その結果、成績が下がってしまうのだと考えられます」

デキのいい友人に刺激されて奮起するケースもなくはないのだろうが、統計的には、デキのいい友人の力量を目の当たりにして意気消沈してしまうことが多いのだ。

勉強とは本来、自分自身との戦いだ。昨日わからなかったことが、今日わかるようになる。昨日できなかったことが、今日できるようになることに意味がある。それなのに友人ができるようになったことで学ぶ意欲を失ってしまうとしたら、とても残念なことだ。

「どの学校に入るかは将来の成功(収入)にあまり関係ない」

「日本の子どもが相対的な自分の順位を非常に気にしてしまうのは、受験制度の影響でしょう。試験日の一発勝負で、自分の進路が決まってしまう。学校にも明確なランク分けがあって、どの学校に入るかで人生が変わるようなイメージがあります。本当はどの学校に入るかは将来の成功(収入)にあまり関係ない(※2)のですが、子どもたちがそう思ってしまっていたら、入学に厳しい選抜がある以上、友達はライバルになってしまうのです」(中室准教授)

ちなみに、スウェーデンの中学生でも職業学科か普通科かの進路選択でピア・エフェクトはマイナスに働くという分析結果が出ているという。厳しいトラッキング(生徒間、学校間の格差をさし、スタート地点から違っていることを指す。陸上競技のトラックが由来)のある場面では、仲間の存在が逆効果となるのは日本人だけではないようだ。

※2 参考記事「じつは学歴で年収は変わらない」日本の教育を変えるエビデンス・ベースドとは? 中室牧子さんに聞く
http://www.huffingtonpost.jp/2014/06/06/makiko-nakamuro-education_n_5457388.html
記事の要旨:違う大学に進学した一卵性双生児の就職後の賃金の差はほとんど見られず、同じ大卒であれば、どの大学に行っていても、その後の人生で得られた賃金に、ほとんど差はなかった。同じように一卵性双生児で、高校の選択が異なる場合(同じ中学に通い、別の高校に通った)一卵性双生児が合格した大学の偏差値にも差はなかった。