百貨店は売り上げ志向、SCは賃料志向
百貨店とショッピングセンター(SC)を比較してみると、店内のショップやブランドの多くは重なっていることがわかる。しかし、並ぶのは同じ商品であっても、その「販売や経営のフォーマット」には違いがある。
GINZA SIXリテールマネジメントの水野和明社長は、両者のビジネスモデル上の「一番大きな違いは、出店者との契約形態」だという。百貨店は、「仕入れ方式」をベースとした業態である。店内の各ショップやブランドのスペースに並ぶ商品は、百貨店が仕入れたものであり、その売り上げと差額から利益を得る。百貨店の各期の収益は、売り上げによって大枠が決まるわけで、そのために百貨店は、店内により多くの商品を並べる方向に向かいがちである。一方で、入居するブランドの全国的な話題づくりにはつながっても店内での売り上げには直結しない施策などには、二の足を踏むことが多い。
対するショッピングセンターは、テナントからの賃料を収入源としている。そのため短期的には、店内の商品の売れ行きによってショッピングセンターの収益が大きく揺らぐことはない。もちろん中長期的には、テナントの売り上げが低迷すれば、賃料の引き下げに踏みきらざるを得ない。しかしショッピングセンターでは、毎期の売り上げを高めようとするインセンティブよりも、高い賃料を設定できる「施設環境を整えよう」とするインセンティブが強くなる。
百貨店を駆動しているのは、売り上げ志向だ。伝統的な百貨店の収益の大枠は売り上げによって決まる。大量の集客を実現するべく、百貨店は、年間52週に渡る密度の高い催事とプロモーションを展開する。さらに外商部隊で店舗の外でも売り上げを高めようとする。
百貨店は、仕入れ方式を活かした独自の売り場構成で、売り上げ志向を追及してきた。百貨店に並ぶ商品は、百貨店が仕入れたものだ。そのため売場構成については、百貨店の裁量で展開することができる。このため各フロアには「トレンド」「モード」「ラグジュアリー」といった名前がつけられ、ブランドが整理される。さらに同じブランドの商品であっても、「レディース」や「メンズ」といった商品分類によって展開は別フロアとなる。あるいは「時計」や「肌着」といった特定の商品だけを集めた売り場をつくることも可能になる。
伝統的な百貨店が、エスカレーター脇やレジ横など店内の「隙間」的なスペースも見逃さず、徹底的に商品を並べるのも、仕入れ志向だからできることだ。さらに多くの百貨店は内装工事を管理する「施設部」をもつため、ショップに必要な什器や資材、レジなども百貨店側で用意できる。
このように変化をつけながら、高密度の商品集積をはかれることが、大都市の中心市街地に立地する百貨店に巨大な売り上げをもたらしてきた。