コンセプトは「お店で食べるような、ガッツリ系チャーハン」

味の素冷凍食品「具だくさん五目炒飯」。7種類の具材が入った具だくさんチャーハンで、同社では長らくこれが一番の売れ筋だった。

味の素冷凍食品には、発売から39年というロングセラー冷凍チャーハン「具だくさん五目炒飯」がある。人気商品ではあるが、冷凍チャーハン市場において、長く2位の座に甘んじており、1位との間には大きな差があった。拡大する冷凍チャーハン市場において、さらなる売上げを確保するためにも、新製品の投入は急務だった。

ザ★チャーハンの開発がスタートしたのは、2015年の発売から約1年半前のこと。冷凍チャーハンのマーケティング調査を行ったところ、1つの課題が浮き彫りになった。それは冷凍チャーハンの“種類”だ。

当時、冷凍チャーハンで売上げトップだった他社製品は、具材の種類が少ないシンプルなチャーハン。それに対し、同社の人気商品「具だくさん五目炒飯」は、さまざまな具材を楽しむタイプのチャーハンだった。

「シンプルなチャーハンは、量をガッツリ食べたいニーズに合いますし、具だくさんのタイプは具材の味を一口ずつ楽しみたいという方向け、そんな違いがあります。調査してみたところ、シンプルな具材で、中華料理らしくガッツリと食べられるチャーハンを求める声が大きかったのです。ならば、そういうチャーハンをうちでも作ろう、というのが『ザ★チャーハン』開発のきっかけでした」(田中氏)

市場調査を行ううちに、他にも見えてきたことがあった。冷凍チャーハンを購入するのは主に主婦層だが、実際に食べているのは夫や子供が多い、つまり「買う人と食べる人が違う」ということだ。

結果として、それまでの冷凍チャーハンは、味もパッケージもファミリー向けの商品がほとんどだった。しかしザ★チャーハンでは、実際に冷凍チャーハンを食べる人であり、さらに外食でもチャーハンを食べる機会が多い、大人の男性をメインターゲットにすることにした。

冷凍ごはんの市場自体が2009年比で124%増加。さらに冷凍チャーハンは127%アップと、チャーハン市場全体が成長している。そんな中でより美味しい冷凍チャーハンを製品化することで手作り、外食のシェアも奪える可能性がある。

「香り+油」で食欲を刺激

具材を厳選した、シンプルでガッツリ食べられる男性的なチャーハン。イメージは固まった。では、ガツガツたくさんの量を食べたくなるような美味しさは、どうやったら作り出せるか? たどりついた答えは、香りや風味だった。

「一番苦労したのは香りを出すことでした。食べるときに、最初に食欲を促してくれるのは香りです。ですので、そこにフォーカスしました。そこでたどり着いたのがにんにく、そしてマー油(ニンニクを入れて加熱したごま油のこと)です。実はマー油って、元々チャーハンには使わない調味料なのですが、これはとんこつラーメンからヒントを得ました」(田中氏)

ザ★チャーハンでは、口の中での美味しさの広がり方を、先味、中味、後味に分類。まず先味として、マー油と葱油の香ばしさが食欲を促し、中味では味の素グループが特許技術を持つ「コク味物質」により味に深みをプラスする。これはホタテ貝や魚醤などに含まれるアミノ酸の結合体だ。そして、後味には同じくグループ企業が開発した「脂の美味しさ成分」を加えることで、思わずもう一口レンゲを動かしてしまうような引きのある味を実現した。

一番のポイントが、先味、中味、後味、それぞれに香り、味、風味を伝えるために調味料や美味しさ成分などをプラスしたこと。思わず食べ進んでしまう秘密はここにある。