ごはんと卵を炒め、ネギと焼き豚は後入れ

こうして、中華料理店で食べるような、強い脂の香りと、濃厚なコクのある、それでいてシンプルな具材のザ★チャーハンができあがった。このあと、テスト環境から本番環境に移行し、大量生産するなかで、テスト環境で定めた味を再び生み出すための試行錯誤が繰り返される。

「量産用の大きな釜で作ると、どうしても味や香りが変わってきます。ここで再び配合などを調整していく。どこに問題があるのかを特定しながら、同じ状態にしていきます」(田中氏)

通常、冷凍チャーハンは大きな釜でごはんや具材を炒め、それを冷凍機器に通して、冷凍食品として加工する。ザ・チャーハンでは、ごはんと調味料、そして卵だけを炒め、葱と焼き豚は炒め終わった後に混ぜ合わせているという。これも、冷凍チャーハンならではの工夫だという。

というのは、焼き豚を一緒に混ぜて炒めてしまうと、袋詰めしたときに分量に差が出てしまうから。また、炒めると、せっかくの存在感のある焼き豚の風味が飛んだり、崩れてしまうという。

「この焼き豚にもかなりこだわっています。ポイントは直火で焼いていること。そして、隠し味に味噌をプラスすることで甘みや深み、そしてコクをプラスしています。レンジで温めたときに最も美味しくなるように調整しています」(田中氏)

ガッツリ食べられる600g、パッケージにもインパクト

2人で食べても300gずつの大容量600g入り。黒ベースのパッケージは、赤や黄色の商品が多い冷凍食品売り場で異彩を放っている。

ザ★チャーハンは1袋600gと量が多い。田中氏によると、家庭用の冷凍チャーハンでは450g入りが多かったが、顧客調査によってこの450gという容量への不満があることも分かった。

「実際に外食チェーンなどに足を運んで、出てきたチャーハンの量を計ってみると、1人分300gぐらいが多かったんです。お客様からも、450gは家族で分けて食べるには中途半端だと言う声が多かったので、それならガッツリ食べられる大容量の600g(2人分)にしようと考えました」(田中氏)

実際に外食でチャーハンを食べる機会が多い男性をターゲットとして見据えた結果だ。今では、他社からも容量600gの冷凍チャーハンが登場しているという。

さらに男性をターゲットにした、ガツンと食べられるチャーハンということで、男性的なインパクトのあるパッケージを採用している。これも、買う人ではなく実際に食べる人を念頭に置いて決めたことと言える。

著者も商品を購入し、実際に食べてみた。10年以上前、独身の頃にはたまに食べていたものの、冷凍チャーハンを食べるのはかなり久しぶりだったのだが、その味、食感の進化には驚かされた。田中氏の狙いどおり、非常にコクがあり、まさに町の中華屋さんの美味しいチャーハンといった味。ガッツリと食べたい空腹時でも食欲を満たしてくれるチャーハンだった。前後して、大手ラーメンチェーン店のチャーハンも食べていたが、ザ★チャーハンの方が美味しいと感じた。