改憲は3分の2を確保した政治家の役割
【塩田】過去の安倍首相の発言などから推察すると、維新の改憲案は、安倍首相の改憲構想と一致しない点が多く、憲法観に相違があるように見えます。
【松井】安倍自民党ですから、自民党の憲法改正草案が安倍さんの考え方だとすると、草案の前文はちょっといただけませんね。国が個人の価値感や家族のあり方についてあれこれと言っている。それは放っといてくれという話です。われわれはそこには反対ですね。
【塩田】維新としては、憲法改正はいつ頃までに、と考えていますか。
【松井】まずは憲法審査会です。現憲法ができて初めて変えようという議論になっているわけですから、慎重にやるべきですが、期限は政治家の任期の間でしょう。改憲案の国会発議は衆参で総議員の3分2が必要です。3分の2がある今の状況で一度は改憲案を発議して国民投票の俎上に乗せるのが、3分の2を確保した今の政治家の役割と思います。
【塩田】衆議院は3分の2を大きく上回っていますから、具体的には次の参院選までの残り2年半の間ということになりますね。
【松井】その間でしょうね。
【塩田】橋下前大阪市長について、今後、政治家として何を期待していますか。
【松井】政治に対して興味と関心は持っていると思っていますが、今後、どういうポジションで自身の興味と関心を訴え、発言していくかは彼の自由ですよ。維新では法律・政策顧問で、月に1回の会議で、その先の1月間の維新の対応とか、次に必要な法律は何かといった形のアドバイスをしてくれます。それは非常に有効に活きていると思います。
【塩田】維新が勢力を拡大するには、橋下さんが先頭に立って旗を振らないと難しいのでは、という見方が根強くあります。
【松井】でも、一人の個人ですから、無理に出させるわけにはいきません。
【塩田】政治リーダーとして、人間として、橋下さんの最大の特徴はどんな点ですか。
【松井】すごいのは、決めたこと、約束したことについて、まったくぶれません。加えてスピード感を持って物事を実現していく。実現のプロセスを瞬時に自分自身の頭の中で組み立てられる人と思っています。目的を達成するために、情にほだされない。そういう点で、無神経でやれる。だから、大改革ができたと思います。
【塩田】松井さんはなぜ政治の道を。昔からいずれ政治家に、と思っていたのですか。
【松井】いや、まったく思っていませんでした。ですが、父が政治をやっていましてね。私はビジネスの世界でそこそこ頑張ってやっていたんですけど、親父から税金の使われ方に対する怒りを聞かされた。「おまえもそこそこ儲けられるようになったら、ちょっと世のためにも働けよ」と言われましてね。
【塩田】維新の会の党首ですから、大阪府知事の後、国政に、といった考えは。
【松井】まったくないですね。知事の公約を実現する。これはほぼ見えてきました。あとは都構想だけです。万博の誘致は国の権限でやる話です。万博をやろうと閣議決定までの道筋をつけるというのが公約で、知事としてはそこまでしかできません。大阪都構想をもう一度、住民のみなさんに判断してもらう。それをやれれば、ほぼ公約達成と思っています。
【塩田】維新の会の代表として、これからの達成目標は何ですか。
【松井】政党ですから、将来的には力を付けて国会で過半数を取り、政権を担ってもらいたいと思っていますが、そのタイム・スケジュールの中に僕自身がいるというのは、まったく考えていない話です。