2025年万博開催を目指す理由
【松井】万博開催の狙いは3つあります。第1は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの後、日本が安定して経済成長を続けるには、世界に対してビッグイベントが必要です。第2は、世界中でニーズのある新しいものを生み出す。柱になるのは健康や長寿というキーワードの新たな製品やサービスです。それをいつまでに完成させるという期間の目標が必要です。
日本が世界一の長寿国になった経緯を見ると、日本のさまざま技術が生かされている。今、世界中で先進国は超高齢社会になってきた。平均寿命は延びていますが、健康寿命との差があり、その差の10年間は、長生きはできているが、自立した生活を送れていない。その人たちに対する社会保障費も増大します。日本は、新しいイノベーションでそこを解決する目標をつくれるのではないか。それは世界中でニーズがあり、日本の新たな産業の柱になると思う。大阪は研究機関、大学など、先進医療に携わる人材が集まっているから、大阪を中心として新しいものを生み出していく。その目標設定として万博は非常に効果がある。
第3は、開催場所をベイエリアにすることです。ベイエリアは本来、どの国でも成長する核のエリアですが、大阪の場合は、今まで巨額の税を注ぎ込んできたのに、成長とかけ離れた「僻地」扱いになっています。マイナスの負債を有効な資産に変える。そのために大阪のベイエリアで万博を、と思っているわけです。
【塩田】会場の建設費も含め、運営費などの開催費用は1000億円以上といわれています。
【松井】期間中の開催費用、運営費はチケット収入でまかなえると試算しています。会場建設費は1200~1300億円という概算が出ていますが、経済効果を考えれば、投資の価値は十分あると見ています。1300億円といっても、東京オリンピック・パラリンピックの国立競技場を一つつくるよりも安い。オリンピックは2週間の開催ですが、万博は半年間やります。2年前、橋下前大阪市長と2人で2020年の東京オリンピック・パラリンピックの後に大阪で万博を、と言って旗を振り始めた頃は夢物語みたいな感じでしたが、政府も成長の起爆剤として考え、僕が持っていった旗を受け取ってくれて旗を振り始めた。機運は盛り上がってきたかなと思っています。
【塩田】昨年の臨時国会で、維新の会は自民党と連携して「カジノ解禁法」と呼ばれるIR(統合型リゾート施設)整備法案の実現を図り、可決・成立しました。経済効果への期待と同時に、カジノの弊害を懸念する声も根強く存在します。
【松井】これはベイエリアの活性化策の一つで、大阪府・市の成長戦略です。ベイエリア地域にエンターテインメントと新エネルギーの拠点の2つの産業の柱を立てる。エンターテインメントの核がIRで、非日常を楽しめるエリアをつくる。去年の時点で大阪にきたインバウンドのお客さんは年間 約940万人でしたが、IRをつくれば、新たにプラス1000万人が訪れると試算しています。大阪の消費拡大にすごくメリットがあると思っています。
弊害はギャンブル依存症ですが、日本では現在、一番はパチンコです。パチンコでギャンブル依存症が出ているのであれば、きちんと定義付けして、国も地方自治体も対応策をつくっていくのが筋論です。IRについてはシンガポール型を目指します。視察に行ってきましたが、シンガポールでは依存症にならないようにさまざまな行政の規制があります。日本もシンガポールでやっている依存症対策を取り入れ、IRができても依存症が増えない対策、対応は十分可能だと思う。それが政治の役割だと思っています。