儲けても質素倹約でないと幸福感情は得られない

このデータでは、生活満足度は年収4万~5万ドル(460万円〜570万円)を底にして年収の増加によってどこまでも増加しているように見えますが、幸福感情の伸びは順調とはいえません。7万5000~10万ドル(860万円〜1150万円)で「大変幸福である」という人が60%、10万~15万ドル(1150万円〜1700万円)でも60%で変わらないというのは何を意味しているのでしょうか。

カーネマンは次のように述べています。

「所得が生活満足度に与える影響と幸福感に与える影響とは、まったく異なる。所得が多いほど生活満足度は高まるのであって、幸福感を味わえなくなる閾値を超えても、それは続く。(中略)人々の生活評価と実際の生活での経験は、関連性はあるとしても、やはり別物だということである」(『ファスト&スロー下』ダニエル・カーネマン著)

次回の原稿は、先ほどのミシガン大の2人の教授が発表した「お金があればあるほどますます幸せになり、そこには飽和点はない」という理論がなぜ、所得を「対数」であらわすことで明らかになるかという点についてご説明します。

所得の増加が対数で示されるということは、年収1000万円の人が年収1億円(10倍)になるのと同じだけの「幸福感の増加」を、年収1億円の人が感じようとすれば年収10億円(10倍)になる必要があるわけです。

高所得者が幸福を感じるためには、貧乏な人が幸福を感じるために必要なお金とは比較にならない莫大なお金が必要だということです。

……ということを踏まえた個人的な考えですが、幸福感が頭打ちにもかかわらず、なんとか生活満足度を1単位でも増加させるべく膨大な時間を使って高い所得を得ようと奮闘するよりも、むしろ限りある命を浪費しないことのほうが大切なのではないでしょうか。

僕は高所得を稼いで富裕層になるというやり方は、幸福感情を鈍らせていってしまうので、正直、賛成しかねます(お前が言うな! という声が聞こえてきそうですが……)。

では、どうすればいいのか?

あくまで質素倹約の倹(つま)しい生活を送り、その中で幸福感情を感じつつ、莫大な資産を形成することをお勧めしたいですね。

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