アパグループのことをイケイケというイメージで見る方も多いと思いますが、大変慎重で、撤退する勇気を重視しています。撤退には大きなお金が必要で、実は一番難しい。過去には、東京に本社を構えたのに再度金沢まで戻ったこともありますし、名古屋の支店開設時には事務所のオープン予定日に撤退したこともあります。

バブルのときも同様です。世界と日本では、不動産の評価方法が異なりました。世界で用いられる、不動産が将来生み出す純利益の現在価値の総和を求める収益還元法で評価したら、日本は世界の4、5倍も割高になっていました。日本の不動産神話はおかしいと気付いて、一気に撤退しました。それを人よりも早くやったから売り抜けることができたのです。儲けた数百億円は、海外で航空機リース投資に回しました。リースは最初の6年は経費が大きく赤字ですが、後に利益で戻ってきます。その資金を改めて不動産に振り向けたのです。収益還元法で考えると、今では保有する不動産の評価は1兆円近くになるのではないでしょうか。

こうしたタイミングの変化を見極めるために一番必要となる要素は、金利水準です。もし物が高くなっても、金利が安ければ返済額は少ないまま。運用で考えたら、全額借りても、その返済より家賃収入のほうが多くなるはずです。今、世界と比較すると、日本は金利がとても安いです。台北、上海、香港、シンガポールといった主要都市の住宅価格は高騰して割高になっていますが、東京はまだ割安です。なかでも都心の超一等地は間違いない。

私たちは、不動産を景気が大底のときからキャッシュで買ってきました。最近では6、7年前が一番の底で、そのときから皇居の周りの土地を60カ所ほど買いました。そこに今、ホテルやマンションを毎月のように建築しています。もちろんサイクルで見れば、オリンピックの後には必ずオーバーホテル現象になります。そうなったら、ダメになったホテルをさらに買えばいい。