昨年末、不登校解消!「僕が学校へ戻った理由」

冒頭でも書いた通り、その本は多くの人に感動と勇気を与えた。しかし、一方で、学校できちんと勉強をさせるべきではないかといった批判があるのも事実だ。

そこで、芭旺くんに聞いてみた。「勉強ってなんだと思う?」。すると、彼はこともなげに即答した。

「勉強はやりたくてするもの。やりたいことをするためにするもの。やりたいことをするための勉強ならその勉強は楽しくなる」

学校で習うような正解のある勉強は、やる気になればいつでもできる。学校は行っても行かなくてもいい場所。芭旺くんはそう考えている。

その「行っても行かなくてもいい場所」に対して、行かない選択をしてきた芭旺くんだが、昨年末、ある決断をした。選択を「行く」に変えて、幼稚園時代からの友達がいる、かつて通っていた福岡の小学校に戻ろうと決めたのだ。なぜ、学校に通う気持ちになったのだろう。芭旺くんはこう言う。

「僕は今、とても自由だけれど、その自由によって逆に不自由になっている部分がある気がしてきたんです。学校という場所で、それを確かめてみようと思いました」

東京から福岡に戻ったら、お父さんとの2人暮し。それは2度目の経験だ。以前はお母さんに会いたいと泣いていた芭旺くんだが、今回は違う。ブログにはこんな逞しい言葉が綴られていた。

<僕達の「家族」っていう定義は辞書に載ってるのとは違う。僕は、地球に住んでて僕の家はとっても広い家でママの部屋に行くのには飛行機に乗るっていうだけのこと(中略)定義をちょっとだけ変えると世界は広がる>

一方、弥生さんは、芭旺くんの姉である高校生の娘との2人暮らしになった。

「福岡にたった翌朝、芭旺くんがいないことに涙が止まりませんでした。でも、そのときに考えたことをショートメールで伝えたら吹っ切れました。返ってきたのは、『はーい』の一言だけでしたけれど(笑)」

学校には戻っても「好きな人から学ぶ」というスタイルは続けていく。生活のベースは福岡でも、東京にもちょくちょく行く計画だ。どちらも「あり」な、芭旺くんの新しい世界が始まった。

変化のスピードが速い不確実なこれからの時代を生き抜くには、人と違うことを創造できる力や正解のない問いを考え答えをみつけようとする力が必要だと言われている。

そのために行われる教育改革では、従来の知識偏重型から思考力・判断力・表現力を伸ばす教育へとシフトチェンジがされる。日本の教育のあり方が大きく変わろうとしている今、子を持つ親が芭旺くんや彼の家族から学ぶことは少なくないだろう。

*『プレジデントFamily 2017春』号では、芭旺くんを含む「好き」を極めに極めている「天才・奇才」を親のコメント付きで紹介している。

発売中の『プレジデントFamily2017春号』より。芭旺くんのほか、佐渡裕が認めたチェリストの小学6年男子、専門家も舌をまく仏像評論家の中学1年女子など、個性的な天才・奇才13人とその親にインタビューしている。
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