プレミアムフライデー、その前に

日本にはさまざまなイベントがある。モチベーションイベントがないと小売業界で言われていた10月には、ハロウインが定着。11月にはブラックフライデーが2016年から本格的にスタートした。また近年は、国民の祝日の一部を月曜日に移動するハッピーマンデー制度が適用され、以前より連休が増えている。今以上にモチベーションイベントを増やして消費を分散させるのではなく、既存のモチベーションイベントや連休をフル活用して消費を喚起する策を考えた方が有効なのではないか。

また、消費を喚起するには所得の引き上げがより重要だろう。経団連が中心となってさまざまな業界団体が集結しているのなら、加盟企業が内部留保から賃金を増やすことを推進するほうが、より優先順位が高いと思うのは私だけではあるまい。

現在の日本におけるマクロ的な問題点として、消費低迷以外に、少子高齢化による構造的な人手不足やなかなか賃金が本格的な上昇に向かわないことなどが挙げられる。

特に構造的な人手不足は、2016年12月分の有効求人倍率が全体でも1.43倍という高水準となっているなかで、今回のプレミアムフライデーの担い手である小売・サービス・飲食業において極めて深刻な状況となっている。

これらの業種では、現場で店長やエリアマネジャーを務める正社員のうち、1年間に3連休はおろか2連休すら取得できていないという人も少なくない。私が経営に関わるある小売企業では、今年度の社員総会で「全員が連続休暇3日以上を最低年1回以上取得できるようにします」と経営者が宣言したくらいだ。小売や飲食等の現場社員の実情がわかっている経営者であれば、今回の「プレミアムフライデー」という発想は出てこなかったのではないか。この話を私が毎月通う温浴スパ施設のなかにある美容院店長にしたところ、「うちは年中無休の施設のなかに入居しているので、人手不足はより深刻。結果的に店長である自分は、年間数日しか休みが取れていない」とのことであった。