牛乳割り、香味野菜入りもイケるらしい
だから方言(島口<しまぐち>)も違えば、食べ物にも特色がある。黒糖焼酎も島や蔵によって個性豊かだ。飲み方もいろいろ。水割りやロックのほかに、お湯割りも飲まれている。牛乳で割ったり、香味野菜(パプリカ、セロリ、しょうがなど)を入れて飲むのもイケるらしい。ちなみに、黒糖焼酎は糖質ゼロ。砂糖が原料なので不思議に感じるが、これは芋焼酎や米焼酎など蒸留酒全般に共通する。糖質を気にしている人にはうれしい。
驚いたのは、奄美大島にある飲み屋街(屋仁川<やにがわ>通り、通称やんご)が、鹿児島県で2番目の規模をほこること。鹿児島の繁華街では天文館(鹿児島市)が有名だが、その次が奄美とは、それだけ酒好きが多いということだろう。実際、やんごの100メートルの通りには300軒もの店がひしめき、夜は酔客で賑わい、帰宅用のタクシーが列をなすという。
島の人たちのアイデンティティーが興味深い。鹿児島と沖縄のどちらにシンパシーを感じているのか。そんな著者の問いかけに対する島人たちの答えは、もっとグローバルだ。与論島の人は「ヨロンはヨロンですよ」という。その心を著者は、「周りを海に囲まれた離島は、ある意味、島の外はすべて海外である。鹿児島なのか、沖縄なのか、海外事情を含む話。少なくとも正しいのは『私は私』である」と解釈する。奄美大島のある杜氏は、外国産の黒糖を使う理由について、奄美を日本とくくることに違和感があると吐露する。
著者は、「他地域との交流はすべて海を越えて行われる離島に暮らしていると、自分の立っている場所を『日本の一部』というよりも、独立したひとつの国家のように感じることが多い。だから、原料の仕入れにしても、『日本と海外』というよりも『島内と島外』という感覚で、単純に、島で供給できないものを、島外から手配しているというわけだ」と理解する。日本は単一の民族ではないし、多様な人々が多様な暮らしをし、豊かな文化を形成している。東京にいると、そういうことを忘れがちになる。世界は広いが、日本も広い。
久しぶりに晩酌に黒糖焼酎を飲んだ。ほのかに甘く、杯が進む。ふわふわと酔いが回る。いますぐ奄美に飛んで行きたい。