たとえば、ある社員は「田舎のスーパーでは買い物に来た高齢者の方が、必ず買い物を終えた後で30~40分休まれていきます。そこにネスカフェを置いて一休みできるコーナーを設けたらどうでしょう」というアイデアを出しました。さっそく協力店を募って実現したところ、休んでいる方々の多くは飲食もするためスーパーの売り上げ向上にもつながり、大変好評をいただいています。

私自身が最近生み出したアイデアには「ネスカフェ アンバサダー」があります。これはコーヒーマシンをネスレから無料で貸し出す代わりに、職場で働く方々の中から代表でお一人に「大使」となってもらい、「ネスカフェ」を職場に広めていただくという取り組みです。アンバサダーは、同じ職場の社員からコーヒー代を回収し、コーヒーのカートリッジをネスレに注文していただくという仕組みです。社員の方は1杯20~30円の安い金額で美味しいコーヒーが飲めます。

以前の日本の会社は「社員が飲むお茶やコーヒーは会社で購入してタダ」のところがたくさんありました。しかし、お茶くみの仕事は女性社員の負担となることが多く、経費削減の流れもあって、今では社内の自動販売機やコンビニで飲み物を買うのが当たり前となっています。

(左)「ネスカフェ アンバサダー」に無料で貸し出されるコーヒーマシン。(右)スーパー内にあるネスカフェを置いた休憩スペース。

オフィスでのコーヒー飲用量は家庭の10倍以上を見込めることから、このアイデアを検証するべく、まずは試験的に北海道限定でアンバサダーを募集したところ、1週間で1500人もの応募がありました。そしてたくさんのアンバサダーの方から「ネスカフェを一緒に飲むようになって、社員同士のコミュニケーションが活性化しました」「社内の同僚に『これまでのコーヒーより美味しいよ。ありがとう』と言われました」といった感想をいただいたのです。コーヒーの売り方を根本的に変えるこの仕組みは多くの会社に導入され、5年目の現在では全国のオフィスに30万人近いアンバサダーがいる事業に成長しています。