一方、地震などの災害で仕事中、通勤・帰宅途中でケガをした場合の治療費は、労災保険からほぼ全額支払われます。労災保険は雇用主が従業員のために加入が義務付けられていますが、まれに、非加入のケースがあります。その場合も救済措置が取られることがあります。阪神・淡路大震災のときは、非加入の従業員にも労災保険が支払われたケースがありました。

さらに、状況によっては社会保険料や税金の納付が延期や免除となる制度があります。会社員については雇用主(会社)が手続きをしますが、自営業者は自分で手続きする必要があります。手続きをしないと、被災前と同様に口座振替などが進みますから注意してください。

民間の生命保険や損害保険も、保険料の支払いを最長6カ月猶予できます。ただ、こちらはあくまでも「猶予」であり、多くの場合、支払い義務が免除されることはありません。

私も阪神・淡路大震災を経験しましたが、災害時にはさまざまな制度が利用できます。避難所にはさまざまな情報が集まりますし、ハローワークの職員や各専門家が無料相談に回ってきます。ぜひそうしたサービスを利用してください。

井戸美枝

社会保険労務士・CFP。神戸市生まれ。身近な経済問題をやさしく解説する講演や記事執筆で人気。厚労省社会保障審議会企業年金部会委員。『知ってトクする!年金の疑問71』など著書多数。
 
(河合起季=構成 榊 智朗=撮影)
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