もう一つ、組織学習を語るときに外せないのが、ブレスト(ブレインストーミング)によるアイデア出しの効率です。実は、ブレストでのアイデア出しは効率がよくないという研究結果が、経営学で多く示されています。

ブレストのアイデア出しが非効率であるという矛盾は「プロダクティビティ・ロス」と呼ばれます。なぜ起こるのかというと、一つは、ブレストでは他者に気兼ねしてしまうから。この傾向は、権威のある人が参加するほど強まります。ブレスト好きな幹部社員が会議を開き、出席者が顔色を窺う中、幹部だけが嬉々として喋り続ける。そんな経験をしたことがある方は少なくないでしょう。

さらに、集団での議論が活発にできたとしても、相手の話を聞いている間は自分の思考が止まってしまい、非効率的です。

しかしブレストが無意味かというとそうではありません。顔を合わせての直接会話によるコミュニケーションを重ねる意味は大きい。そう、「トランザクティブ・メモリー」を高める効果がブレストにはあるのです。ブレストでアイデアが出なくても、情報の共有が、次のアイデアにつながる。そんな裏の効能を意識してみてください。

入山章栄
1996年慶應義塾大学卒業、98年同大学院修士課程修了。2008年米ピッツバーグ大学経営大学院博士号取得。13年より早稲田大学ビジネススクール准教授。
 
(伊藤達也=構成 奥谷 仁、的野弘路=撮影)
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