アメリカとイランは真の仲間なのか
傲慢な上司や使えない部下を「共通の敵」として悪口を言うと、急速に距離を縮めることができるのは事実です。つい愚痴大会をしてしまう人もいるのではないでしょうか。ただし、このやり方で生まれるのは、結びやすく、ほどけやすい“かりそめ”の結束力。新しい職場での“とっかかり”としては重宝しますが、長期的な仲間づくりには適しません。よく言われることですが、「共通の敵」はシーンによって変わるもの。たとえ飲み会で“仲間”になったつもりでいても、ランチタイムには自分が標的にされるかもしれません。
とはいえ、これを悪いことだとは言い切れません。ビジネスの現場では、さまざまなルートから情報を手に入れることが大切です。そのためには、ある程度いろいろな人とコミュニケーションをとっておく必要があります。どんな噂話にも加わらず、「悪口は悪だ!」と徹底的に排除すれば、清廉潔白なイメージはつくでしょうが、「付き合いにくい人だ」と思われるのも必然。孤立すれば、必要な情報すら得られなくなってしまうでしょう。孤立するくらいなら、多少ネガティブな会話に加わることも必要悪の範疇だと思います。
たとえば、今のアメリカとイランにとって、シリアとイラクを占領しようとする武装勢力「イスラム国」は、一掃すべき共通の敵。そのため、水面下でアメリカとイランは共闘しています。現時点のお互いのメリットを考えれば、構図自体は理に適っています。しかし、今後アメリカとイランが友好的な関係を結ぶのは、簡単なことではありません。「共通の敵」でつくれる仲間は、つまりその程度のものなのです。