80年代バブル崩壊後、じつはこれまで3回の回復局面がありました。00年の「ITバブル」と07年、つまり「リーマン・ショック」前のことを知る人は多いと思いますが、このほか96年がそれに当たります。それぞれのポイントは図1・2にまとめましたので参照してください。図2に示した企業の「3つの過剰」とは、「借金」「設備」「雇用」のことです。

では、日経平均が2万円超えを持続した2015年の回復局面は、過去3回と比べ違いはあるのでしょうか。私は質が違うと考えています。過去3回の回復局面では、いずれも前回の高値に届くことがなく、それぞれの高値を線で結ぶと右肩下がりのラインになります(図1)。

しかし、15年は初めて前回の高値1万8261円を超えました。つまり回復局面から踏み込んで「長期的な上昇相場」の段階に進んだと見ることができるのです。

また過去3回は80年代バブル崩壊による不良債権問題やデフレ突入、企業の競争力低下などを抱えたままでしたが、今回は、不良債権問題はすでに解決済みで、アベノミクスによってデフレから脱却しつつあることも追い風です。

企業も本当の意味での構造改革が進み、利益の出る体質に変わってきています。先ほどのPERで見ても、80年代バブル崩壊後の回復局面で最も高値をつけた96年6月が約100倍、ITバブルの99年から00年の間には150倍となったこともあり、リーマン・ショック前の07年は20数倍という状況でした。しかし、15年に入ってからは18倍から20倍程度と、適正範囲で推移していました。

さらに、日銀の徹底した金融緩和策は当分の間続くと予想されますので、市場が急激に冷え込むとは考えにくいのです。

最後に、1929年の世界大恐慌以降の米国株の動きと、89年以降の日経平均の動きを重ね合わせると、ちょっとした類似点がありますので、図3として紹介します。こじつけ程度に見てください。

恐慌後のアメリカも3回の回復局面があり、恐慌後25年かけて恐慌前の水準まで株価を回復させました。54年のことでした。日本はバブル崩壊から約25年たったいま、NYダウほどには回復していませんが、構造的な強さを取り戻しつつある点では共通しています。

またNYダウは54年の高値回復後も続伸し、たった5年後の59年には株価がその2倍近い値をつけました。これを単純、かつ乱暴に当てはめれば、東京オリンピックが開催される2020年、日経平均は4万円近くまで上昇することになります。

もちろん、そんな筋書き通りにはいかないでしょう。株価が一本調子で上昇するとも考えられません。しかし、デフレと経済低迷の中で過ごすことが長かった私たちも、そろそろ頭を切り替える段階にきていることは間違いありません。

岡田晃(おかだ・あきら)
大阪経済大学客員教授・経済評論家。日本経済新聞編集委員、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」プロデューサーなどを経て独立。『やさしい「経済ニュース」の読み方』(三笠書房)など著書多数。
(小澤啓司=構成 遠藤素子=撮影)
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