ヒラリー上司「(女性部下に)甘えてんじゃないわよ」
だが、若い女性たちにとっては、あまり受けはよくないらしい。外資系消費財メーカーの人事課長はこう語る。
「女性にもかかわらず男性と同等に働き、成果を上げてきた女性部長や役員もいます。社内の女性活躍イベントで彼女たちに自分の仕事との両立などについて話をしてもらうことがありますが、出席した若い女性の中には『私は先輩たちのようにタフではないし、とてもマネができません』とか『そこまで苦労して管理職になりたいとは思わない』と感想を漏らす人もいます。古い世代の女性幹部をロールモデルにするのはなかなか難しい」
若い女性社員だけではない。
女性幹部職の側も若い女性社員に対して厳しい視線を送っている、と語るのはネット広告業の人事部長だ。
「10~15年前に妊娠・出産した女性社員は職場でひどい仕打ちをされた経験を持っています。最近、妊娠・出産する女性の比率が増えているので、経験者である女性部長に職場での運用をどうしたらよいのかについて教えを乞いました。すると、いきなり『あの人たち、甘えてんじゃないわよ!』とすごい剣幕で怒り始めたのには驚きました。妊娠・出産の経験があっても必ずしも理解があるわけではないのです」
実際、こうした歴戦の女性上司の下に仕える部下も大変らしい。
約束や命じた仕事をやり遂げられなかった場合は周囲の面前で叱責することも珍しくない。報・連・相の徹底も男性上司以上に厳しい人もいるという。新人など部下を配置するのも気を遣うらしい。
「女性だから男性だからと、性別による差別をすることがないのは彼女たちの良いところです。ただ、自分にも厳しい性格の人が多く、仕事には厳しい。男女に限らず、新人では真面目で意欲のあるタイプかつストレス耐性のある人を(人事部としては該当の部署に)配置するようにしています。また、男性上司以上にコミュニケーション能力も問われます。男性間では多く言葉を交わさなくても通じる部分がありますが、女性上司の場合はたいしたことではないと思っても論理的に説明することを求めますし、相当鍛えられます」(ネット広告業人事部長)
女性上司は厳しい反面、部下の成長を促す効果もある。
事務機器メーカーの女性人事課長はこう語る。
「各部署の交流会の席で入社1年後の2人の女性社員の様子が違っているのにびっくりしました。女性上司の下で働いた女性は、動きがきびきびしていかにも仕事ができそうだなという雰囲気でした。もう1人の男性上司の下で働いている女性は『あらら、まだお嬢様気分が抜け切れていないな』というのが周囲の人と一致した感想でした。ちやほやされているのでしょう」
新人を育てるなら女性上司が最適ということだが、その分、負荷も大変なのではと思ってしまう。結局のところ、“ヒラリー上司”の下で働きたいという人は、選挙結果同様、部下の性別を問わずに少ないのかもしれない。