【飯島】政治の世界は相談事が多ければ多いほど経験値が上がります。それで思いついたところに連絡して物事を動かします。どんな事案だろうと、即座に担当局・担当課のキーパーソンのところに行かないと、かえってややこしくなることもあるから、最初に誰に話すかが重要です。そういえば日本ソムリエ協会をつくったときも大変でした。今ではみんな「ワイン」が大好きだけど、30年くらい前は日本酒とウイスキーの時代でしたから、酒類を扱う大蔵省(現・財務省)も相手にしてくれず、農水省でも断られてしまいました。結局、私が小泉厚生大臣の秘書官だったこともあり、厚生省の生活衛生・食の安全の担当部署にかけあって、ソムリエ協会の許可を取ったんです。

【服部】実は、飯島さんは日本のソムリエ第1号なんですよね。僕は30番くらいです。

【飯島】当時の大臣だった小泉元首相が名誉ソムリエの称号をいただいたので「私は『名誉』はいりません」と言ったら普通のソムリエの1号にしてくれました(笑)。お酒はほとんど飲まないのですが……。

【服部】今、食の問題で私が一番心配しているのが、東京オリンピックの食材の調達です。一部競技の開催地問題が話題になっていますが、こちらのほうが深刻です。4年前のロンドン五輪から、オリンピックで使う食材はオーガニックが推奨されており、リオでもそうでした。東京でも同じレベルの食材が求められるでしょう。それで調べてみたら、日本の有機農法食材は0.18%しかありません。

【飯島】政府は何か支援をしていないのですか?

【服部】仕事の関係で会った農水省の幹部に「オーガニックの調達はどうするのですか?」と聞いてみたら、「JOCの許可がないとできません」。五輪担当の部署に行って同じことを聞いたら「農水省は何か言っていませんでしたか?」。それで「農水省はJOCの許可が必要と言っている」と伝えて、ようやく動きだしました。それが約8カ月前の話。

【飯島】そこまでオーガニックにこだわる理由は何ですか?

【服部】あらゆる競技でドーピング検査が厳しくなっていますから、選手たちは食べ物で体を作るしかありません。特に0コンマ何秒を競うような世界ではトップ選手の気の使い方は半端じゃありません。野菜に農薬が残っていたら、ドーピング検査に出てしまうこともありますから、純粋なものしか食べられない。陸上競技のボルト選手などもオーガニックしか口にしないそうです。