企業の家族手当 子持ち社員優遇 未婚者はゼロ円も
「配偶者控除」の見直しで考えられる「会社の対応法」をもう少し掘り下げてみよう。まず頭に浮かぶのは、家族手当の見直しだろう。
人事院の「平成27年職種別民間給与実態調査」によれば、76%の会社が家族手当を支給している。そのうち、配偶者に家族手当を支給しているのは90%に達している。
その配偶者に対する家族手当は「所得制限がある」会社が84%あり、その所得は103万円が68%、130万円が25%だという。
支給基準である103万円というハードルがなくなったり、逆に150万円に引き上げられたら、会社はどんな対策を講じるのだろうか? 考えられるものを列挙してみよう。
(1)健康保険の扶養の基準(130万円)に切り替えて、家族手当を従来通り支給する
(2)家族手当を廃止する
(3)配偶者分を廃止して、子供分を引き上げる
上記の中で、一番、従業員からの反発が少ないのは「(1)健康保険の扶養の基準(130万円)に切り替えて、家族手当を従来通り支給する」だ。これなら何の議論も起きない。
「(2)家族手当を廃止する」というのも、増える気がする。現に、東京都の中小企業賃金・退職金事情によれば、家族手当を支給する会社はこんな感じで減ってきている。
《昭和57年》83.4%
《平成12年》75.3%
《平成26年》58.3%
しかしながら、単なる不利益変更では従業員からの反発も予想されるので、その承諾を得るのが大変そうだ。
「(3)配偶者分を廃止して、子供分を引き上げる」というのは、少子高齢化が進む中で、1つの対応策かもしれない。例えば、こんな家族手当があったとする。配偶者および子供2人という前提だ。
配偶者分8000円+子供分4000円+子供分4000円=合計1万6000円
このような場合は、以下のように見直したらどうだろうか?
配偶者分0円+子供分1万円+子供分1万円=合計2万円
妻の分の手当ては0円にする代わり、子供分は手厚くする。そうすれば社員によって損得は出る(未婚者は一番損する可能性がある)ものの、納得する人も既婚者や子供が多い社員を中心に一定数出るだろう。次回は、「配偶者控除」の見直しで考えられる「女性の働き方の変化」と「会社の対応法」についてレポートしていこう。