全開なら一発でサージしてブラックアウト

FITを導入した民主党政権は、当時4%程度だった再生可能エネルギーによる発電割合を20年までに20%に引き上げることを目標に掲げた。当時の4%の再生可能エネルギーのほとんどは水力で、日本の河川は開発され尽くしているから水力の発電量を増やす余地はない。従って残り16%を太陽光や風力でまかなうしかない。しかし、風や日照時間に頼る発電は稼働率が低い。前述のように太陽光は13%だし、風力でも19%ほどしかない(平均して水力を除く再生可能エネルギーの稼働率を15%と考える)。

再生可能エネルギーの発電割合を20%まで持っていったとして、火力と水力が安定的に発電できるベースロード電源となり、水力を除く再生可能エネルギーの電源割合が15%と仮定しよう。再生可能エネルギーの稼働率15%はあくまで平均値。太陽がガンガンに照りつけ風がビュンビュン吹き荒れて、もし太陽光と風力の発電能力が100%全開になれば、プラス85%の電力が一気に放出される。ベースロード電源とほぼ同量の電力である。そんなものを電力ネットワークが吸収できるわけがない。一発でサージして、ブラックアウトだ。85%は極端にしても、需要量を40%や50%上回るぐらいの電力が一気に出てくるリスクはある。「全部買います」が原則のFITでは、こうした事態に対応できないのだ。

経済的にもオペレーション的にも現行のFIT、固定価格買い取り制度は破綻が見えている。これを収拾する方法としては競争原理に戻るしかない。すなわち、再生可能エネルギーを「クリーンエネルギー」と特別視してインセンティブを与えて普及させるのはあきらめる。FITの買い取り価格は他の電源より若干甘い程度に設定して、競争力のある太陽光発電や風力発電を目指させる。サージの対策も買い取る側がコントロールできるようにするのだ。

電源をどういう割合で組み合わせるべきか。最適なエネルギーミックスは地域によって違うし、目指す社会によっても違ってくる。原発事故を経て節電や省エネに対する意識も大きく変わった。日本にとって、あるいは自分たちのコミュニティにとって最適なエネルギーミックスというものを、もう一度考え直すべき時期にきている。

(小川 剛=構成 AFLO=写真)
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