あまりに低い太陽光や風力の稼働率
再生可能エネルギーの安定活用にはまだまだ技術的な課題も残されている。たとえば平地が多いドイツでは風力発電が盛んで、FITもこの分野で先行した。農家などが多少の補助金をもらって風力発電機を導入、自家発電して余った電力をグリッド(送電会社)が買い取る。環境に優しいといわれる風力にも問題はあって、ドイツでは風車から発生する低周波ノイズによる健康被害や、風車に鳥が巻き込まれる被害がよくある。
グリッドとの関係でいえば、不安定な発電量が一番の問題だ。風がない日は電気が起こせないから、農家は自分で使う分を買わなければならない。逆に風が強すぎると一帯の発電量は一気に増えて、グリッドが吸収できなくなる。電気事業には「同時同量の原則」という基本原則があって、地域内の電力の需要量と供給量を一定に保っていないと電力のネットワークが非常に不安定化する。これがサージ(過電圧)という現象を引き起こして、ブラックアウト(大停電)につながる危険性があるのだ。一旦ブラックアウトするとシステムを一から立ち上げなければならないので、復旧にも時間がかかる。というわけで、電気を売る側は風が強い日ほど売り物が増えるのだが、グリッド側としては風の強い日ほど電力の買い取り量を制限しなければならない。つまり、「売りたい電気は全部買います」というFITのルールが適用できなくなるのだ。余分な電気を蓄えておける低コストの蓄電技術は世界的に確立されていない。ドイツは水を電気分解して水素の形で蓄える蓄電技術の研究を進めているが、実用化はまだ遠い。
風力発電の「風任せ」と同じように、太陽光発電にも「お天道様任せ」というウイークポイントがある。日本でいえば、冬場は曇天ばかりの日本海側は太陽光発電には向かない。日照時間が短いからだ。日本で日照時間の長い地域といえば、瀬戸内海沿岸や山梨県平野部などが挙げられる。その山梨県の北杜市で私の知り合いの会社が25年ぐらいソーラーの大規模な実験をしているが、太陽光の稼働率は13%程度だそうだ。つまり、発電設備の能力を100としたときに、平均13%しか稼働しないということ。日本で一番日照時間が長いエリアでその程度なのだ。
40円/kWhの買い取り価格でFITがスタートしたときには、ブームで日本各地のゴルフ場や墓地や空き地にソーラーパネルが設置されたが、年平均13%しか稼働しないことがわかっていた業者はほとんどいないだろう。13%という稼働率をベースにすると、いくら40円で買い取ってもらってもそれほど儲からない。申請はしたものの、具体的に計算してみたら当初の目論見ほど儲からないということで、投げ出してしまった業者も多いのだ。